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贈与税、生前贈与とは—贈与税の税率・計算法と非課税枠の活用法

更新日:2020.08.18

贈与税、生前贈与とは—贈与税の税率・計算法と非課税枠の活用法

自分の財産を生きている間に対象者に譲る生前贈与は、相続対策として注目している人も多いのではないでしょうか。ここでは、生前贈与の際に発生する税金である贈与税の税率や計算方法、非課税枠の活用方法を税理士が解説します。

生前贈与とは

亡くなった人の財産をその親族などが承継することを相続といいますが、これに対し生きている間に自分の財産を親族などに譲り渡すことを生前贈与といいます。ここで注意したいのは贈与が「契約」であるということです。財産を渡す側の「あげます」ともらう側の「もらます」という双方の合意があって初めて贈与が成立します。

贈与税とは

贈与税の概要

生前贈与によって財産をもらった個人にかかる税金を贈与税といいます。あくまでもらった側にかかる税金で、あげた側にかかる税金ではありません。たまに混同されるケースがあるのでご注意ください。贈与により贈与税が発生する場合には、贈与があった年の翌年3月15日までに税務署に贈与税の申告書を提出するとともに贈与税額を納付する必要があります。

贈与税の課税対象? 非課税対象??

それではどのような場合に贈与税が課されるのでしょうか。贈与税の課税の方法としては、納税者の選択により「暦年贈与課税」といわれるオーソドックスな贈与税と、一定の要件を満たした場合に選択できる「相続時精算課税」という2通りの方法があります。それぞれ満たすべき要件や手続きが異なりますので順に見ていきましょう。また贈与税がかからない場合も合わせて解説します。

贈与税がかかる場合

暦年贈与課税

暦年贈与課税とは、その年の1月1日から12月31日までの間にもらった財産の価額をもとに贈与税を計算する方法です。贈与税にも相続税と同様、「基礎控除額」という贈与税がかからない範囲がありますが、その範囲を超えた場合にその超えた部分の金額に対して贈与税がかかってきます。

相続時精算課税

60歳以上の父母又は祖父母から財産をもらった20歳以上の子又は孫であれば、「暦年贈与課税」の他、「相続時精算課税」を選択することができます。この制度を選択すると、その年の1月1日から12月31日までの間にもらった財産のうち2,500万円まで贈与税はかかりません。2,500万円を超えた場合にはその超えた金額に一律20%の税金がかかります。

ただしこの制度にはいくつかの注意点があります。

  1. この制度は選択制となっていますので贈与税の申告の際に「相続時精算課税選択届出書」を添付書類と共に提出する必要があります。
  2. 相続時精算課税を選択する場合、たとえ贈与した財産の金額が2,500万円以下で贈与税額がゼロであった場合でも贈与税の申告書を提出する必要があります。
  3. ある贈与者からもらった財産について相続時精算課税を選択した場合には、その後その人から贈与については暦年課税贈与に戻ることはできません。

贈与税がかからない(非課税)となる場合

基本的に財産を贈与された場合には贈与税がかかりますが、次のような財産を贈与された場合には贈与税がかかりません。

  1. 会社(法人)から財産をもらった場合 ※注: 贈与税では所得税(一時所得)がかかる
  2. 親から子への学費、生活費など扶養義務者から受ける財産で通常必要と認められるもの
  3. 個人からの香典、お中元などの贈答、お祝いやお見舞いとしてもらった金品で世間的に見て妥当な金額であるもの
  4. 父母や祖父母から受けた住宅取得資金、教育資金、結婚子育て資金で一定の要件を満たすもの

その他については国税庁のオフィシャルサイト内ページをご参考ください。

贈与税の計算方法

次に暦年贈与の場合の贈与税の計算方法について見ていきます。贈与税においても贈与税がかからない範囲が存在し、これを「基礎控除」と呼びます。またその財産を誰からもらったかにより贈与税の計算に使われる税率が2つ存在します。

贈与税がかからない範囲

贈与税にも相続税と同様に、税金がかからない範囲である「基礎控除」があります。その年の1月1日から12月31日までにもらった財産のうち110万円までの金額には贈与税はかかりません。あくまでもらった側1人につき110万円です。2人から財産をもらったからといってそれぞれ110万円、あわせて220万円とはなりませんので注意しましょう。なお、その年にもらった財産の合計額が110万円以下であれば贈与税の申告も不要となります。

贈与税の税率

平成27年以降の贈与税については以下の通り、「一般贈与財産」と「特例贈与財産」に区別されました。贈与税の計算式そのものはどちらも同じですが、財産額に応じた税率に違いがあります。

贈与税額=(その年に贈与によりもらった財産の価額-110万円)×税率

一般贈与財産の計算式

一般贈与とは、特例贈与以外の贈与をいいます。他人間での贈与、兄弟間、夫婦間などの贈与の場合をいいます。贈与税の計算において使われる税率は以下の通りとなります。

基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

特例贈与財産の計算式

特例贈与とは祖父母や父母からその年の1月1日現在で20歳以上である子や孫への贈与をいいます。財産の世代移転を促しその財産を使ってもらうことを狙って、一般贈与より有利な税率が設定されています。

基礎控除後の課税価格 200万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 4,500万円以下 4,500万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

贈与税の非課税枠

暦年贈与課税における基礎控除110万円とは別枠に、一定の金額までを非課税とする特別な非課税枠が設定されている制度がいくつかあります。贈与を受けた現金をある目的のために使った場合に、その現金の贈与ついて適用される制度などが主な内容となっています。いくつか紹介しますので、要件に当てはまりそうな方は制度の利用をぜひ検討しましょう。

住宅取得等資金の特例

その年の1月1日において20歳以上である人が、令和3年12月31日までの間に父母や祖父母から、住宅の新築等のためにあてる資金として現金の贈与を受け、翌年の3月15日までに実際に住宅を新築して居住をした場合に適用される制度です。住宅取得の時期や住宅の性能などに応じて300万円から1,500万円まで、基礎控除とは別枠で贈与税の非課税枠が用意されています。ただし、その贈与を受ける人の合計所得金額が2,000万円以下であることや住宅床面積などの要件、また贈与の時期によって非課税枠の金額もことなりますので、要件等の詳細は国税庁のオフィシャルサイト内ページをご参照ください。

相続時精算課税の特例

前述の通り、通常の暦年贈与課税に変えて、納税者の選択により「相続時精算課税」という制度を選択することができます。通常の暦年贈与の基礎控除額は110万円ですが、相続時精算課税の場合はその控除額が2,500万円となります。この2,500万円は1年で使い切る必要はなく、数年にまたがってもかまいせん。合計で2,500万円に達するまで非課税とされます。

ただこの制度の特徴はその名の通り、贈与した財産を贈与時の評価額により、相続財産として相続税の計算に加算した上で贈与税を精算しましょうという制度です。つまりこの制度により支払った税額はあくまで仮の金額であり、相続税の申告によりようやく税額が確定することとなります。相続時に相続財産に加算する金額は贈与時の評価額となっていますので、将来値上がりが期待される財産については早い段階で贈与しておくことによってその評価額を縛ることができ、相続税の節税が可能となる場合があります。

教育資金の一括贈与の特例

令和3年3月31日までの間に30歳未満の方が教育資金として使うために、受贈者の祖父母や父母から現金等を取得した場合には1,500万円の金額までは贈与税が非課税となります。学費等をその都度父母や祖父母が負担する場合にはその負担額は非課税となりますが、一括して事前に教育資金を贈与したい場合に使える制度です。詳細な要件は国税庁のオフィシャルサイト内ページをご参考頂きたいと思いますが、要件等のポイントを挙げると以下の通りとなります。

  1. 贈与を受けた現金等を管理する金融機関等と教育資金管理契約を結ぶ必要がある
  2. 非課税となる教育資金は授業料等に限るなど一定の制限がある(教育に関係のない使途については贈与税の対象)
  3. 贈与を受けた人が30歳に達し、使い残しの金額があり、110万円をこえた場合には贈与税の対象

結婚・子育て資金の一括贈与の特例

令和3年3月31日までの間に20歳以上50歳未満の方が結婚・子育て資金として使うために、受贈者の祖父母や父母から現金等を取得した場合には1,000万円の金額までは贈与税が非課税となります。子育て資金等をその都度父母や祖父母が負担する場合にはその負担額は非課税となりますが、一括して事前に教育資金を贈与したい場合に使える制度です。詳細な要件は国税庁のオフィシャルサイト内ページをご参考頂きたいと思いますが、要件等のポイントを挙げると以下の通りとなります。

  1. 贈与を受けた現金等を管理する金融機関等と結婚・子育て資金管理契約を結ぶ必要がある
  2. 非課税となる結婚・子育て資金は婚礼・出産費用等に限るなど一定の制限がある(結婚・子育てに関係のない使途については贈与税の対象)
  3. 贈与を受けた人が50歳に達し、使い残しの金額があり、110万円をこえた場合には贈与税の対象

夫婦の間で居住用の不動産を贈与した場合の配偶者控除

婚姻期間が20年以上となる夫婦間において、例えば夫が配偶者である妻に不動産を贈与した場合、又はこれから新しく居住用不動産を購入する際の資金として現金を贈与した場合には、基礎控除とは別枠で2,000万円の非課税枠があります。ただし、配偶者は相続税の計算において少なくとも1億6,000万円までは相続税がかからず、贈与により取得した不動産には「小規模宅地の特例」という特例が使えなくなります。非課税枠そのものは制度としてありますが、損する場合もあり得ますので利用にあたっては注意が必要です。

贈与税の申告方法

その年に贈与を受けた財産の金額(その財産が株式や不動産などである場合にはその評価額)が110万円を超える場合には翌年の2月1日から3月15日までの間にその贈与を受けた人の住所地を所轄する税務署に贈与税の申告書を提出します。提出には窓口へ申告書を持参する以外に郵送や電子申告によることも可能です。また贈与税はその申告内容によって添付書類が必要となる場合が多いためあらかじめ調べておいて添付漏れがないようにいたしましょう。

贈与税の納税方法

贈与税の納税は現金による納税となります。全国の金融機関の窓口や所轄税務署の納税窓口で納付することができます。またクレジットカードでの納付やバーコード付納付書によりコンビニでの納付も可能となっています。

贈与税と相続税、どちらがオトク?

贈与税の税率は先ほど見ましたが、相続税の税率も見てみましょう。

相続税の速算表【平成27年1月1日以後の場合】

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億超 55% 7,200万円

こちらも贈与税と同様に累進課税となっており、相続財産の金額に応じ最大55%の税率となっています。おおよその相続財産額と適用されるであろう税率が把握できれば、その税率より低い税率の範囲で生前贈与をして相続税のかわりに贈与税を支払うことによって全体の税額を低くおさえることが可能となります。また、時間はかかりますが110万円という贈与税の基礎控除の範囲内で生前贈与を行なえば、贈与税も相続税も無税で財産を次の世代へ移すことが可能となります。

贈与税、申告漏れがばれた場合

贈与税の申告が必要にもかかわらず申告していなかった場合や、申告した贈与財産の一部が漏れていたことが判明した場合には、期限後による贈与税の申告書の提出や修正申告書の提出が求められます。このような場合にはペナルティも課されますので、申告が必要な方は期限内に漏れなく申告するようにしましょう。

贈与税の無申告が判明する理由

例えばマイホームを購入した場合には、税務署から「お尋ね文書」が届く場合があります。不動産の名義は法務局に登記され税務署もそれを把握しています。マイホームの購入資金の出処について「お尋ね」が届きます。住宅ローンにより購入したのか、自己資金により購入したのか、その自己資金はどのようにして形成したのかを尋ねる文書です。その人の過去の収入状況からみて、自己資金の金額が大きすぎれば親族からの贈与が疑われます。こうして贈与税の申告漏れが発覚する場合があります。

申告漏れのペナルティ

贈与税を申告すべき人が申告しなかった場合には、本来納付すべき贈与税額に加え、無申告加算税という罰金が課されます。また贈与財産の一部に申告漏れがあった場合には過少申告加算税が課されます。また納付期限(申告書の提出期限)から実際の納付日までの日数に応じ延滞税という利子もかされます。

贈与税の疑問

親子での贈与も贈与税の課税対象?

他人間の贈与だけでなく親子間での贈与、祖父母と孫との間による贈与も110万円を超えるものであれば贈与税の課税対象となります。

親や祖父母からもらったお金をタンス預金に。それでも申告漏れを指摘される?

贈与してすぐにはばれなかったとしても、その後にその資金を使って不動産や株式を購入した場合や、贈与をした人が亡くなって相続税の税務調査が入った場合にタンス預金の存在が発覚し相続税や贈与税の申告漏れを指摘される場合があります。

申告期限が過ぎた場合は?

申告期限が過ぎた場合には期限後であっても贈与税の申告が求められます。その際に本来納付すべき税額のほか、上述した罰金が課されます。正しく期限内に申告した人が損することが無いようにするためです。

贈与税の節税方法

生活費や教育費を活用する

先ほど、贈与税が非課税になる場合として、「親から子への学費、生活費など扶養義務者から受ける財産で通常必要と認められるもの」を紹介しました。こちらは祖父母から孫に対するものであっても可能です。ただしまとまった金額を一括で渡すのではなく、学費などをその都度援助すれば贈与税はかかりません。使い残しがないようにその都度必要な金額を贈与するようにしましょう。

何といっても基礎控除

贈与税を節税するためには何といっても基礎控除の110万円の活用は欠かせません。例えば祖父母の相続・贈与対策を考える場合、子や孫の人数が多ければ多いほど基礎控除による無税の枠は広がります。110万円の範囲内であれば贈与税を支払うことなく将来の相続対策となります。なるべく早い段階から長い年数をつかって基礎控除の範囲内での贈与を続けることが確実な節税方法となります。

相続専門の税理士に依頼

特に株式や不動産を贈与する場合には財産の評価が欠かせません。素人が評価するとどうしても過大評価となってしまい、余計な税金を支払うこととなる場合が多くなります。相続専門の税理士に申告を依頼することでこのようなことがないようにしましょう。

税理士に相続税申告を依頼する場合

メリット

先述の通り、余計な税額を支払う必要がなくなる他、非課税などの特例を受けるために必要な要件の判定や添付書類の有無など、適正な申告をするためには専門家の知識は欠かせません。正しい申告による適正な納税をするためにも税理士に依頼するメリットは大きいです。

デメリット

正しい申告をするためには多くの資料や通帳のコピーなどを求められる場合もあります。プライベートを掘り下げられることについて抵抗感を感じる人もいるかもしれません。

費用感

現金贈与などそれほど手間のかかない申告であれば3万円以内で申告してくれるところが多いようです。不動産や自社の株式など財産評価が必要な贈与については10万円前後というところが多いように感じます。

まとめ

今回は特に贈与税が非課税になるケースを中心にみてきました。基礎控除の110万円の活用のほか、住宅資金贈与の非課税など特例による非課税制度も多く用意されています。自力での申告が難しいケースもありますから無理せず専門家の力も借りて適正な申告・納税を実現していただきたいと思います。

執筆者プロフィール
安井貴生
税理士。税理士法人に所属して活動しており、法人税決算から税務申告・税務調査立会、経営相談まで幅広く業務を行っている。最近は、相続や事業承継案件、M&Aなどの取扱いが増加中。土地や非上場株式などの財産評価を得意とするが、節税ありきではなく相続人全員が納得する相続業務を何よりも重視している。

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