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相続税の非課税枠、限度額と活用法–財産の評価法も解説

更新日:2020.07.21

相続税の非課税枠、限度額と活用法–財産の評価法も解説

相続税改正以降、相続税の発生件数が増加傾向となっています。そんな中、気になるのが相続税の非課税枠。ここでは、税理士が相続税の非課税枠について解説します。

相続税とは

相続税とは、ある方が亡くなった場合に、相続によってその亡くなった方の財産を遺族等が取得した場合にその財産に対してかかる税金をいいます。すべての相続に相続税がかかるわけではありませんが、財産が多ければ多いほど税率も高くなり、相続税も多くかかってきます。

相続税が発生する割合

国税庁では過去の相続税の申告状況について毎年統計を発表しています。令和1年12月発表の統計「平成30年分 相続税の申告実績の概要」によると、平成30年中の死亡者は136万人。このうち11万6千人、8.5%に相続税の申告が必要となりました。さらに11万6千人のうち8万3千人、6.1%には実際に相続税の負担が発生しました。平成27年1月以降の相続税の改正があって以来、相続税の発生件数、割合ともに増加傾向にあります。

相続税が課税対象?非課税??を調べる方法

それでは実際に相続が発生した場合に相続税がかかるのかどうかをどのように判定するのでしょうか。相続税は以下のように計算されます。

「亡くなった人が持っていた財産-債務・葬式費用」×税率

これだけを見れば財産を少しでも持っていれば相続税がかかりそうですが、相続税にはある一定の金額まで相続税をかけない基礎控除と言われる非課税枠があります。したがって実際に相続税がかかるかどうかは、「亡くなった人が持っていた財産-債務・葬式費用」が基礎控除を超えるかどうかということになります。

基礎控除について

それでは実際に基礎控除をどのように計算するか見ていきましょう。

基礎控除の額は

3000万円+相続人の人数×600万円

という計算式によって計算します。

例えば、お父さんが亡くなり、残された遺族がお母さんと子が2人だったとします。この場合の相続人は3人となりますから基礎控除額は、

3,000万円+3人×600万円=4,800万円

となります。

つまり「亡くなった人が持っていた財産-債務・葬式費用」が4,800万円以下であれば相続税はかからず、申告の必要もありません。逆に4,800万円を超えると申告が必要となり、その超えた部分に対して相続税がかかってきます。

法定相続人について

亡くなった方(以下、「被相続人」)から財産を取得するためには相続人である必要があります。相続人となれる人は民法において定められており、その家族の構成等によって順位づけた上で定められているので以降解説します。

相続人とは

  1. 被相続人に配偶者がある場合、その配偶者は常に相続人となります。配偶者であった期間などは特に定められていません。
  2. 次の人は、以下の順位で配偶者とともに相続人となります。
  • 2-1)被相続人の子。なお、相続開始以前に子が死亡している場合にはその子(孫)が相続人となります。これを代襲相続といいます。
  • 2-2)被相続人に子がいない場合には被相続人の父母が相続人となります。なお、相続開始以前に父母が死亡している場合は被相続人の祖父母が相続人となります。
  • 2-3)被相続人に子や孫、父母や祖父母もいない場合には被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。なお、相続開始以前に兄弟姉妹が死亡している場合にはその子(甥や姪)が相続人となります。

養子がいる場合の相続人

被相続人に養子がいる場合、養子は実子と同様に相続人となり財産を相続できます。

ところで相続税を計算する上で、前述の基礎控除の計算(3000万円+相続人の人数×600万円)など、相続人の数はとても重要な要素となります。むやみに養子を増やすことによる過度な節税を制限するために相続税の計算においては相続人に含める養子の数を以下のように制限しています。

  1. 被相続人に実子がいる場合: 1人まで
  2. 被相続人に実子がいない場合: 2人まで

ただし、被相続人の配偶者の子(いわゆる連れ子)を養子にした場合など一定の場合には上記にかかわらず実子としてすべて相続人として相続税を計算します。

相続放棄があった場合の相続人の考え方

相続人の中で相続の放棄をした人がいた場合は、相続人でなかったものとして財産を相続できません。ただし相続税の計算上は相続放棄があった場合でも、放棄がなかったものとして相続人の数に含めて税額を計算していきますので注意が必要です。

相続税の控除(非課税)の種類

先ほど説明した基礎控除は全ての相続において使えるものですが、その他に相続税を減額してくれる効果がある控除項目など、知らないと損する項目がいくつかありますのでここで紹介していきます。

配偶者控除

被相続人が残した財産は配偶者とともに形成したものであること、また残された配偶者の生活保障の観点から、配偶者が相続により取得した財産のうち、次のどちらか多い金額までは配偶者には相続税がかかりません。

  1. 1億6千万円
  2. 配偶者の法定相続分

※この制度の適用を受けるためには相続税の申告期限までに遺産分割がなされ、配偶者が実際に財産を取得しておく必要があります。

※その他の詳細な要件はこちらをご参考ください。

未成年控除

相続により未成年者が財産を取得した場合には「10万円×満20歳になるまでの年数」で計算した金額をその未成年者の相続税から控除することができます。

※年数の計算について1年未満の期間は切り上げして1年とします。

※その他未成年者についての詳細な要件はこちらをご参考ください。

障害者控除

相続により85歳未満の障害者が財産を取得した場合には、障害の程度に応じ、次の計算式により計算した金額をその障害者の相続税から控除することができます。

  1. 一般の障害者 10万円×満85歳になるまでの年数
  2. 特別障害者  20万円×満85歳になるまでの年数

※年数の計算について1年未満の期間は切り上げして1年とします。

※その他障害者についての詳細な要件はこちらをご参考ください。

相次相続控除

今回の相続における被相続人が過去10年以内に相続により財産を取得し、相続税を支払っている場合は、今回の相続により財産を取得した相続人の相続税から一定の金額を控除することができます。今回の被相続人が過去に相続税を支払っていたかどうかはぜひ確認するようにいたしましょう。

※詳細な金額の計算等はこちらをご参照ください。

小規模宅地の特例

相続する財産に土地が含まれている場合には必ずこの「小規模宅地の特例」が適用できないかどうか確認する必要があります。この特例は、被相続人が住んでいた自宅の土地、事業に使っていた土地、貸していた土地について、一定の要件を満たした場合には最大80%相当の金額をその土地の評価額からマイナスできる制度です。とても効果のある制度ですがその分、相続する相続人の要件や土地の要件について細かく複雑に定められています。この特例だけでも1つの記事になる程ですので今回は概要だけにとどめ、詳しくは国税庁オフィシャルサイト内ページをご参照ください。ただし、こうした特例があるということはぜひ覚えておいてください。

「死亡保険金」の非課税枠

死亡保険金は民法においては相続財産とされていません。しかし他の財産と同様に被相続人の死亡により遺族が保険金を取得することには変わりないため、相続税法においては死亡保険金も相続財産として相続税の対象とします。これを「みなし相続財産」といいます。ただし遺族の生活等の観点から一定の金額までを非課税としています。

非課税限度額=500万円×法定相続人の数

これを超える場合にはその超えた金額に対し相続税が課されます。

「死亡退職金」の非課税枠

被相続人が在職のまま死亡し、死亡後に遺族に対して退職金が支払われることがあります。この退職金も死亡保険金と同様に「みなし相続財産」として相続税の対象となります。また死亡退職金にも非課税枠があります。計算式は死亡退職金と同様です。この死亡保険金と死亡退職金の非課税枠は、それぞれ別枠となっていますので注意してください。

その他非課税財産について

死亡保険金、死亡退職金以外にも非課税とされる財産があります。その中でも知っておいた方が良いものが

  • 墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物
  • 申告期限までに国・地方公共団体・公益法人に寄附をした相続財産

となります。特に墓地や墓石などは被相続人の生前に準備しておくことは相続税の対象となる財産を減らすことにより節税につながりますのでお勧めいたします。

債務と葬儀費

冒頭でも述べましたが、相続税の計算において現金などのいわゆるプラスの財産だけを考慮して相続税を計算すると、借入金など債務があった場合には相続人のその後の生活に支障をきたします。そこで、相続税の計算はプラスの財産から債務や葬式費用をマイナスした純財産を対象とします。以下、マイナス可能な項目の具体例を示しますのでご参考ください。

  1. 債務: 借入金、未払税金(住民税・固定資産税など)、未払医療費、未払の生活費等
  2. 葬式費用: 葬儀費用、葬儀の際の寺院費用、火葬費用等

財産の評価額について

実際に相続税を計算するにあたっては、相続財産を全て金額に置き換える必要があります。この作業を「財産評価」といいますが、具体的な評価方法は相続税法の財産評価基本通達というものにより財産の種類ごとに定められています。以下代表的な財産の種類ごとにその評価方法を紹介いたします。

現金・預貯金

現金。預貯金については被相続人名義の死亡日現在の残高が評価額となります。生前に取引があったであろう銀行に残高証明書を依頼するのが一般的です。

土地

土地は宅地や田、畑、山林などの地目ごとに評価していきます。さらに土地の評価方法については路線価方式と倍率方式があります。

  1. 路線価方式: 路線価方式とは、路線価といわれる土地に接する道路に付された金額によって土地を評価する方法です。この路線価は道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの評価額とされています。ただし土地の形状や接道の状況に合わせ、奥行価格補正率など各補正率により路線価を補正していきます。そしてその補正後の路線価に面積を乗じて評価額を計算していきます。
  2. 倍率方式: 倍率方式とは、路線価が付されていない地域の評価方法となります。都市部では路線価が付されていることがほとんどですが、農村地域など路線価が付されていない地域も多くあります。この場合はその土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します。

参考:路線価図・評価倍率表

建物

建物は全て固定資産税評価額により計算します。この固定資産税評価額ですが、固定資産税の納付書と一緒に固定資産税の課税明細書に評価額が記載されていますがその金額と同一です。一度確認されてみてはいかがでしょうか。

上場株式

上場株式は原則的には被相続人の死亡日の終値によって評価します。ただし評価の安全性や公平性を保つため次の3つの価額のいずれかより高い場合は次の3つの価額のうち最も低い価額をその評価額としてよいこととなっています。

  • 死亡日月の毎日の最終価格の平均額
  • 死亡日月の前月の毎日の最終価格の平均額
  • 死亡日月の前々月の毎日の最終価格の平均額

なおこの平均額ですが東京証券取引所のホームページで調べることができます。

死亡保険金・退職金

先ほども説明いたしましたが、死亡保険金・退職金には非課税限度額があります。したがって非課税度額(500万円×法定相続人の数)を超える金額が評価額となり相続税が課されます。

自動車

自動車の評価額は被相続人の死亡日の時価となります。精通者意見価格ともいわれますが、中古車買取業者の見積額などが該当します。インターネットで見積ることも可能でしょう。

骨董品・絵画等美術品

こちらも死亡日時点での精通者意見価格で評価することが一般的です。リサイクルショップなどで査定してもらうなど、第三者に算出してもらった換金価値と考えて頂ければ結構かと思います。

相続税の計算方法

相続財産を洗い出し、財産評価して遺産分割協議が整えばいよいよ相続税の計算に入ることとなります。相続税は次の順序によって計算します。

  1. 課税される財産額の算出: 「被相続人のプラス財産―債務・葬式費用-基礎控除額」
  2. 相続税の総額の計算: 相続税は(1)の財産を各相続人がひとまず法定相続分で相続したものと仮定して相続税の総 額を先に計算します。
  3. 各相続人の納税額の計算: (2)で計算した相続税の総額を実際に各相続人が相続した財産額の割合によって按分して各相続人の相続税額を計算します。

相続税非課税枠の活用法

養子縁組

養子縁組によって相続税を計算する上での法定相続人を増やすことができます。法定相続人の数が多くなれば相続税は安くなります。法定相続人の数が影響する項目を改めて整理します。

  • 基礎控除の金額: 3,000万円+600万円×法定相続人の数
  • 生命保険金・死亡保険金の非課税枠: 500万円×法定相続人の数
  • 相続税の総額の計算: 法定相続人の数に応じた相続人が法定相続分で相続したとして総額を計算します。相続税は財産額に応じた累進課税となっており、数が多ければ多いほど1人あたりの相続財産は低くなり、税率も低くなります。

実子がいる、いないで1人又は2人までと数に制限はありますが、養子縁組によって相続人の数を増やすことができれば上記のメリットを享受することができます。例えば孫を養子縁組すれば法定相続人が1人増えるほか、孫も相続人となるため財産を1代飛ばして相続させることができるなど多くのメリットがあります。家族関係など、節税以外にも考慮すべき点はありますが、検討の価値は十分あるでしょう。

墓地、墓石は生前に

先ほども述べましたが、墓地や墓石にあてる現預金をそのまま持っていれば相続財産として相続税の対象となります。ところが生前にその現預金を使って墓地や墓石を購入しておけばそれは相続税の非課税財産となり、結果的に節税となります。墓地・墓石がまだない場合は生前での準備をお勧めいたします。

まとめ

以上、相続税を計算する上での控除項目や非課税枠などを概観してきましたが、項目も多岐にわたりなかなかすぐには理解できないかもしれません。しかし知っていると知ってないでは税額に多くの差額が生じる場合もありますので今回を機会に一つでも多くの項目を覚えて頂き、来るべき相続への備えのご参考になれば幸いです。

 

執筆者プロフィール
安井貴生
税理士。税理士法人に所属して活動しており、法人税決算から税務申告・税務調査立会、経営相談まで幅広く業務を行っている。最近は、相続や事業承継案件、M&Aなどの取扱いが増加中。土地や非上場株式などの財産評価を得意とするが、節税ありきではなく相続人全員が納得する相続業務を何よりも重視している。

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