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遺言とは-6種の遺言の特徴や作成&保管法と遺言が必要なケース

更新日:2020.07.20

遺言とは-6種の遺言の特徴や作成&保管法と遺言が必要なケース

死後も適切な財産処分が行える「遺言」は、生前の想いを家族の経済的基盤に反映させるための重要な行為です。生前準備として遺言を有効活用するには、その機能や方法をしっかり理解する必要があります。この記事では、相続を意識したときに知っておきたい「遺言の基礎知識」について網羅的に解説します。

遺言とは

生前から死後に向けて意思を伝える行為を、広く一般に「遺言」と呼びます。しかし、ひとくちに「遺言」と言っても意味にブレがあります。相続をテーマに考える上で、まずは用語の理解を押さえましょう。

「遺言」と「遺言書」と「遺言状」

そもそも「遺言」という用語は、その行為に法的効力があるかどうかで読みが変わります。日常会話で用いられるときは「ゆいごん」ですが、法律的な文脈で用いられる際は「いごん」と読むのが正解です。

相続と関わりの深い「遺言」(いごん)は法律行為であり、特定の内容について民法のルールに沿った方法で書面化されることで効力を生じます。 

“遺言”を巡る用語の区別

  • 遺言(ゆいごん): 「故人の意思」を指す広く一般的な呼称
  • 遺言(いごん): 「故人の意思」の法律上の呼称
  • 遺言者(いごんしゃ):  遺言する人自身であり、死後は「被相続人」とも呼ばれる
  • 遺言書(遺言状): 民法の定めに沿って遺言(いごん)が記載された書面の名称

遺言の意義と効力

法律行為である「遺言」は、相続手続きで最重要とも言える行為です。ここでは、その意義と効力を整理します。

遺言の意義

相続手続きで遺言行為を行うのは、生前と同じように故人の意思で財産処分できるようにするのが主な目的です。

そもそも亡くなった人の財産の行方は、相続法で「特定の親族関係を有する人の共有に属する」と定められ、分割後の各人の相続割合(=法定相続分)も指定されています。

言うまでもなく家庭にはそれぞれの事情があり、相続法の定めに従った処分では不都合が生じるケースが多々あります。こうした不都合を防ぐため「被相続人の意思」を死後の財産の行方に反映させるのが、遺言の意義そのものです。

遺言の効力

先述の通り、遺言は書面化しなければ効力を発揮しません。加えて、その内容を実現する義務が生じるのは遺言者の死後に限ります(死因行為)。

法的効力を有する遺言で取り決められるのは、財産の処分方法ばかりではありません。相続人構成の変更や、内容実現に関わる事項についても、遺言者の意思で指定できます。

遺言の効力(1)遺産の取り分に関すること

  • 相続させる割合を指定する
  • 相続権のない人物に財産を与える
  • 遺産分割方法を指定するか、禁止する
  • 生命保険金の受取人を変更する 

遺言の効力(2)相続人構成と内容実現に関すること

  • 子を認知し、相続人に加える
  • 相続権をはく奪し、財産を承継させない
  • 遺言執行者(内容実現を主導する人物)を指定する

遺言と法務局

実際に遺言行為を行う際の問題なのは、作成した書面(遺言書)の保管中に紛失・滅失してしまう恐れがある点です。行政がこの点を理解し、遺言書の適切な管理を助ける「自筆証書遺言書保管制度」が2020年7月にスタートしました。

自筆証書遺言書保管制度とは

「自筆証書遺言書保管制度」とは、遺言書を自宅で作成した上で、法務局に属する保管所へ預託する制度です。利用の際は、遺言書そのものの他に所定の申請書類と手数料が必要です。

預けた遺言書は全国各地の保管所からいつでも閲覧でき、預託先保管所であれば内容変更や遺言そのものの撤回も可能です。

自筆証書遺言書について

本制度で法務局に預託できるのは、制度名の通り「自筆証書遺言書」と呼ばれる形式で作成された遺言書のみです。

自筆証書遺言は作成が容易である反面で、自宅で遺言者自身が責任をもって保管するのが原則であり、変更・取消の際に不備が生じて遺言行為が無効になりやすいのが難点です。こうした遺言形式のデメリットを解消しようとするのが「自筆証書遺言書保管制度」の目的です(遺言形式については詳しく後述)。

【生前準備時】自筆証書遺言書保管制度の利用方法

遺言者が保管制度を利用する際は、以下の流れで手続きを進めます。

【遺言者編】自筆証書遺言書保管制度の利用方法

  1. 自筆証書遺言の作成
  2. 遺言書保管所(申請先)の選択
  3. 申請書の作成
  4. 保管申請(手数料発生)
  5. 「保管証」の受け取り

(2)の申請先の選択では、遺言者の①居住地・②本籍地・③所有不動産の所在地のいずれかを管轄する保管所から選択できます。

保管申請の際は「本籍記載のある遺言者の住民票」(作成から3か月以内に公布されたもの)と「本人確認書類」(運転免許証やマイナンバーカード等)に加え、遺言書1通につき3,900円分の収入印紙を手数料として準備し添付します。

【相続開始後】自筆証書遺言書保管制度の利用方法

本制度の利用中に遺言者が死亡した時は、相続人による内容確認と実現のため、下記の手続きを行わなければなりません。

【相続人編】自筆証書遺言書保管制度の利用方法

  1. 交付請求する遺言書保管所の決定
  2. 交付請求書の作成・添付書類の準備
  3. 交付請求の予約
  4. 交付請求手続きの実施(手数料発生
  5. 「遺言書情報証明書」の交付

(1)の交付申請は、全国どこの保管所からでも可能です。

申請時は、遺言者と相続関係にあることを証明するため「①遺言者の出生から死亡までの全戸籍謄本」「②相続人全員分の戸籍謄本」「③相続人全員分の住民票の写し」が3種類の提出書類に加え、遺言書1通につき1,400円分の収入印紙で手数料を納めます。

上記①+②の戸籍謄本の組み合わせは、今後行う遺産の名義変更手続きでたびたび必要になります。事前に1組用意して最寄りの法務局で「法定相続情報一覧図」の作成を申請しておけば、本交付申請以降その一覧図の写しをもって代えられます。

遺言書情報証明書とは

相続人の手続きで交付される「遺言情報証明書」とは、預託されている遺言書の内容が記載されたものです。不動産登記・預金の払戻しなど、遺言内容を実現する際の添付書類として活用できます。

遺言書保管事実証明書とは

相続人の手続きで交付できる書面には、遺言書が法務局に預託されているか否かが確認できる「遺言保管事実証明書」もあります。

遺言書の存在を家族に伝えることができないまま死亡し、なお相続人が保管証を発見できなかったとしても、本証明書の交付申請によって遺言書の有無が確認できます。

遺言の種類

そもそも遺言する方法(遺言内容を書面化して法的効力を持たせる方法)には、下記の3種類があり、これらはまとめて「普通方式遺言」と呼ばれます。

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは「手書きで作成して自宅で保管する」遺言形式です。保管制度で触れた内容を含め、メリットとデメリット・作成方法は以下の通りです。

自筆証書遺言のメリット&デメリット

自筆証書遺言の最大のメリットは、PC操作スキルがなくとも全文手書きで作成でき、証人の立会もいらない手軽さです。

一方でデメリットとして、すでに触れた通り「自宅管理による紛失・滅失」「不備や判読不能による無効化」の2つのリスクがある点が指摘できます。作成時は民法で定められた書式を守り、出来るだけ丁寧に記入しなければなりません。

自筆証書遺言の作成方法

自筆証書遺言の作成においては、公的に”ひな形”の公開や使用指示があるわけではありません。縦書き・横書きのいずれか好きなレイアウトで、以下のルールを守って作成します。

【自筆証書遺言作成時のルール】

  • 作成年月日の記入+署名捺印を忘れず行う
  • 財産を指定するときは口座情報・所在地・地番・金額などを明確に指示する
  • 訂正するときは民法第968条3項で定められる方法で行う

3点目の訂正に関しては、①訂正箇所を二重線で消して押印し、②必要に応じて訂正内容を書き加え、③欄外で訂正箇所と訂正前後の内容を付記して署名しなければならないと定められています。

作成済みの自筆証書遺言書は、貸金庫等の滅失リスクが少ない場所で安全に保管するのが一般的ですが、見つかりやすさも含めて考慮すると先述の保管制度が適します。

公正証書遺言とは

普通方式遺言のひとつ「公正証書遺言」とは、公証役場(私的な契約書面に携わる官公庁の一種)に遺言書作成と保管を任せる方法です。

公正証書遺言のメリットとデメリット・作成方法は以下の通りです。 

公正証書遺言のメリット&デメリット

公正証書遺言の最大のメリットは、自力で作成する必要がないため書式逸脱や判読不能等によるミスがない点です。自宅外で適切に保管されるため紛失・滅失の恐れがなく、相続人による書面捜索(遺言書の検索)が容易なのも利点です。

また、その性質上内容が真正であると保証されるため、遺言書発見時に必要となる「検認」を家裁に申請する必要がありません。

数少ないデメリットは、作成時に手数料(1万6千円~)と証人2人以上の立会が必要になる点です。「多少コストがかかっても保管方法や法的効力が信頼性できる遺言にしたい」と考える人に適します。 

公正証書遺言の作成方法

公正証書作成の作成では、遺言内容さえ決まっていれば文面まで自分で作る必要はありません。スムーズに進めるために、以下の手続きの流れの理解しておきましょう。 

【公正証書遺言作成の流れ】 

  1. 事前準備として、公正証書遺言原案の作成(公証役場との打ち合わせ
  2. 証人2名を選ぶ(役場に人選を依頼することも可)
  3. 作成当日証人の立会のもと公証人に口頭で原案内容を伝え、作成してもらう
  4. 遺言者・証人・公証人が作成した遺言書に署名捺印
  5. 正本・謄本の交付 

なお、遺言内容そのもの(遺産の取り分や相続税対策など)の相談対応は公証人の業務外です。原案作成時の相談先は弁護士または司法書士になる点に注意しましょう。

秘密証書遺言とは

「秘密証書遺言」とは、自宅で作成した遺言書を公証役場に持ち込み、封印の証明と遺言書の存在について公的記録を残す遺言形式です。そのメリットとデメリット・作成方法は以下の通りです。

秘密証書遺言のメリット&デメリット

秘密証書遺言のメリットは、生前の開封・改ざんを徹底して防ぎながら、死後容易に発見できるよう手配できる点です。また、PCやワープロでの作成が認められているため、判読不能で無効になるリスクも防げます。

一方で、作成時に手数料(定額1万1千円)と証人2人以上の立会が必要になるほか、原本は遺言者の責任で管理しなければならない点はデメリットです。

秘密証書遺言の作成方法

秘密証書遺言の内容作成については、自筆証書遺言のルールに準じます。公正証書遺言と同じく、スムーズに仕上げるために下記の流れを理解しておきましょう。 

【秘密証書遺言作成の流れ】 

  1. 遺言書の本文を作成(PC・ワープロでの作成可))
  2. 出来上がったものに署名捺印
  3. 遺言書を本文に使ったものと同じ印鑑で封印
  4. 証人を選ぶ
  5. 公証役場の予約
  6. 当日、証人立会のもと遺言書が入っていることを公証人に伝える
  7. 遺言者・証人・公証人が封筒に必要事項記入と署名捺印を行う 

公正証書遺言と同じく、遺言内容そのものは弁護士または司法書士に相談しましょう。

特別方式の遺言書

平時作成する「普通方式遺言」のほかに、緊急事態下では「特別方式遺言書」による意思の遺し方も認められています。それぞれ証人の立会が条件ではあるものの、口述筆記による簡素な作成方法が認められているのが特徴です。 

【特別方式遺言の種類】

  • 危急時遺言: 疾病や乗船中の船舶により、死亡の危機が迫っているとき
  • 隔絶地遺言: 居住地域での行政処分や乗船中であることが理由で、外部との交通手段を遮断されているとき

遺言信託とは

普通方式遺言を自力で作成するプロセスに不安があるときは、信託業者のサービスの一環として行われている「遺言信託」も利用できます。その詳しい内容は以下の通りです。

遺言信託の仕組み

遺言信託の仕組みは、①遺言者に対し信託業者が遺言行為のコンサルタントを行い、②死亡時は「遠方に住む相続人への死亡通知」から「遺言内容の実現」までを一括で業者が実施するものです。

遺産の有効活用に悩む相続人に対しては、金融のプロの目線で資産運用と管理に関するマネジメントも実施されます。 

遺言信託の利用の流れ 

生前に遺言者が行うこと

  1. 信託業者に相談
  2. 遺言内容&死亡通知人の取り決め
  3. 契約締結・公正証書遺言の作成

死亡時に信託業者が行うこと

  1. (相続人)死亡通知の受領
  2. (信託業者)相続人との打ち合わせ
  3. (信託業者)遺言の執行

遺言と相続

相続において「遺言」は必須ではなく、これから被相続人になろうとする人の任意で行うものです。

もっとも、財産は遺された家族のためのものであり、当事者で話し合って処分を決めてもらうのが理想です。しかし、そう上手く行かないケースが少なからず存在していることも事実です。

特に下記のようなケースでは、トラブル防止・手続き負担の軽減の両方の目的を果たすため、遺言行為は必須です。

遺言が必要なケース1

  • 不動産や株式を所有している
  • 相続税対策したい
  • 金融機関や取引先に対して借金がある
  • 配偶者のために生活費や住宅を確保したい

「遺産承継すべきかどうかの判断」「遺産分割方法の検討」に時間がかかるケースです。適切な判断が行える被相続人が指示(遺言)を与えておくことで、上記の負担を軽減できます。

遺言が必要なケース2

  • 相続人に高齢者や未成年者がいる
  • 相続人の性格や居住地が原因でトラブルに発展する可能性がある
  • 財産を多めまたは少なめに与えたい人物がいる
  • 婚外子に相続させたい

家族関係や金銭管理能力を巡ってトラブルに発展しやすいケースです。被相続人が各人に配慮した遺言を行うことで、家族に起こりうる争いや経済的困窮を防げます。

※遺言行為・遺言書についての詳細は以下の記事を参考にしてください。

まとめ

「遺言」は財産処分のほかに、生前できなかった家族構成員に対する変更行為(相続権の付与やはく奪)を死後も可能とするものです。

遺言する意義は、生前の想いを死後の処分に反映させることだけではありません。相続トラブルを防ぎ、自力で金銭管理できない家族の生活基盤を守る上では、ほとんど必須の行為だと言えます。

家族の安心が得られるベストな内容・形式で遺言するにあたり、弁護士または司法書士のアドバイスが役立ちます。積極的に相談してみましょう。

執筆者プロフィール
遠藤秋乃
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年に司法書士資格・2016年に行政書士資格を取得。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。

「つぐなび」の運営は、1970年創業の株式会社船井総研ホールディングス(東証1部上場、証券コード:9757)の経営コンサルティング事業を担う株式会社船井総合研究所が行っています。…もっと見る

船井総合研究所は、相続分野において700事務所にものぼる全国の弁護士・税理士・司法書士といった士業事務所のコンサルティングを行っており、その長年のノウハウをもとに「つぐなび」を2020年に開設いたしました。
現在、全国的に高齢人口の急速な増加を続けており、総人口は減少していく一方で、高齢者人口は2040年まで増え続けると予測されています。それに伴い、相続財産をめぐるトラブルも増加、複雑化していることが喫緊の課題となっており、さらに、問題を未然に防ぐための遺言や民事信託などの生前対策のニーズも年々高まっています。 「つぐなび」では、相続でお困りの皆様が、相続の”プロ”である専門家と一緒に相続の課題解決をしていけるようサポートいたします。

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