相続手続きのすべてを詳細解説! 相続完全ガイド

更新日:2023.11.28

相続手続きのすべてを詳細解説! 相続完全ガイド

親や配偶者といった近親者が亡くなったあと、それが急なことであろうがなかろうが、家族や親族には故人を偲ぶ暇もないほどの忙しさに追われるのが現状です。

残された家族の生活が守られるよう、一つひとつの手続きについて優先順位を考えながら進めていきたいものです。

この記事では、相続に関する一通りの流れを確認することができます。将来に備えて、もしくは今まさに困っている人もぜひ参考にしてください。

相続手続き全体の流れ

相続の手続きは、後々の家族の生活に大きく影響する可能性があります。

手続きを専門家に依頼するのもよいですが、少なくとも基本的な流れはおさえた上で、手続きに漏れがないかを意識して進めましょう。

相続がトラブルによって「争族」になるという話がありますが、不必要なところにエネルギーを使わなくていいようにしたいものです。

あらかじめどのようなことをいつまでにすべきかを把握しておけば、難所となりそうな部分も落ち着いて取り組めるでしょう。

死亡~葬儀

1: 死亡診断書の受け取り

被相続人が亡くなった知らせを聞き、遺体を確認したら、死亡診断書又は死体検案書を受け取ります。

被相続人が入院先で亡くなった場合には、被相続人の担当医師が死亡診断書を発行します。

死因がはっきりしない場合などには、死体検案書となります。死亡診断書と書式は変わりません。死亡診断書がないと火葬、埋葬が許可されません。

これらは後日、金融機関や保険会社での手続きなど各種手続きに必要となりますので写しをとっておくことをおすすめします。

2: 死亡届の提出

前述の死亡診断書の用紙の左側が死亡届で、A3用紙の見開きとなっています。

これらは死亡診断書と共に死亡の事実を知った日から7日以内に、被相続人の住民登録がある市区町村役場に提出します。

死亡届が記入できるのは遺族・親族・同居人・家主などの関係者(届出義務者)です。

また、亡くなってから24時間以内は火葬ができませんが、死亡診断書・死亡届と一緒に火葬許可申請も併せて行なうことが一般的です。

3: 葬儀

葬儀については、亡くなった当日は身内のみで仮通夜を執り行い、翌日以降に本通夜および葬儀を行うケースが多いです。

葬儀の後は火葬となりますが、火葬や納骨の際には火葬許可証が必要になります。

火葬許可証は申請後すぐに市区町村より発行されますので、火葬の日まで保管しておきます。

死亡届等の提出から火葬許可証発行までの手続きは、葬儀業者が代行してくれるケースも多いです。

通夜や葬儀についてはいつまでにしなければならないという決まりはありません。

火葬が終わると、火葬場が火葬許可証に日時などを記入、証印して返却してくれます。

この証印が押された書類が「火葬証明書」および「埋葬許可証」になり、納骨の際に必要です。

年金・公共料金系の手続き

4: 遺族年金手続き

遺族年金とは、国民年金または厚生年金保険の被保険者が亡くなった時に、被相続人によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。

遺族とは、子のある配偶者又は子が該当。

子とは18歳未満か、又は20歳未満の1、2級の障害状態にある者をいい、できるだけ速やかに年金事務所や年金相談センターに届出ます。遺族年金の申請は死亡から5年以内です。

遺族年金には「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」があり、被相続人の年金の納付状況などによって、いずれかまたは両方の年金が支給されます。

請求のためには、死亡届の写しなど死亡の事実を証明できる書類が必要となります。

5: 年金受給停止の手続き

被相続人が年金受給者であった場合は、受給年金を停止するため年金事務所等に「年金受給者死亡届」を提出します。

国民年金は死亡日から14日以内、厚生年金は死亡日から10日以内に届出ます。手続きには被相続人の年金証書、死亡の事実を証明できる書類が必要です。

また、年金は2か月に1回であるため、未支給年金については被相続人が亡くなった当時、被相続人と生計を同じくしていた、配偶者、子、父母など3親等内の親族に支給されます。

ただし、申請から受領まで数カ月かかります。

6: 健康保険の資格喪失届の提出

被相続人が自営業者などであって国民健康保険に加入していた場合は、死亡から14日以内に「国民健康保険資格喪失届」を市区町村役場に届け出て、国民健康保険証を返却します。

その際、高齢受給者証、限度額適用認定証があれば一緒に返却します。この時にも死亡の事実を証明できる書類が必要となります。

また、被相続人が従業員であった場合は、勤務先を通じて健康保険組合に死亡後5日以内に届出し、同様に健康保険証等を返却します。

7: 介護保険の資格喪失届の提出

被相続人が介護保険の被保険者であった場合には、死亡から14日以内に「介護保険資格取得・異動・喪失届」を市区町村役場に届け出て、介護被保険者証を返却します。

その際、介護保険負担限度額認定証があれば一緒に返却します。

介護保険料の未納分があれば相続人が代わりに納めなければなりませんが、還付金が発生する場合もあります。いずれも保険料過誤状況届出書を提出します。

なお、被相続人が40歳以上65歳未満の場合で要介護・要支援認定を受けていなければ、この手続きは不要です。

8: 世帯主の変更

世帯が夫婦2人だけだった場合、世帯主変更は必要ありませんが、亡くなった後の世帯に15歳以上の人が2人以上いる場合は新しい世帯主の届出が必要です。

死亡から14日以内に市区町村役場に届出ます。世帯主変更にあたっての手続者は、必ずしも新世帯主である必要はありません。委任状があれば代理人でも可能です。

世帯主変更の手続きは、多くの市区町村では「住民異動届」という書類が兼ねています。なお、市区町村への手続きにおいては、他の手続きに関しても本人確認書類として、運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなどが必要です。

顔写真のついていない健康保険証などは他の書類とあわせて2点必要とされます。

9: 生命保険金の受け取り

生命保険金を受け取れることがあらかじめわかっている場合にはすぐ手続きができますが、後になって保険金が請求できることが発覚する場合もあります。

いずれにしても請求できることがわかった時点で速やかに手続きします。

まず、保険契約者又は保険金受取人が生命保険会社に連絡を入れると、生命保険会社から必要書類一式が送られてきます。

次に、保険証券に記載された保険金受取人は請求手続きをすると、後日生命保険会社から支払可否判断の通知がきます。そして、最終的に保険金が指定口座に振り込まれます。

なお、生命保険については契約時の約款にて保険金の支払期限を定めていますので、確かめましょう。

10: 金融機関への連絡

一般的には、遺族が金融機関に亡くなったことを連絡すると、金融機関は口座名義人の死亡を知ったその時点で口座を凍結します。

死亡届を役所に提出した時点では預金口座は凍結されません。

口座凍結の理由は、死亡した日時点の預金残高を確定し、他の相続人が勝手に預貯金を引き出すことによる相続人間のトラブル防止のためです。

2019年7月より相続法改正により、引き出す人の法定相続分の1/3までで、かつ、一金融機関あたり150万円までは、凍結口座から預貯金を引き出せるようになりました。

これは「預貯金の仮払制度」と呼ばれ、相続人の必要資金への対応のため設けられました。

しかしながら、用途としては被相続人が負担すべきであった未払の入院費などに限定すべきでしょう。

11: 公共料金や各種サービスの変更と解約

被相続人の死亡によって電気、ガス、水道などの公共料金や定期的な引き落としのある事業者への連絡をし、変更や解約の手続きが必要となります。

個々のサービスによっては、次の請求がきてしまいますので1~3カ月ぐらいをめどに行いましょう。

被相続人亡き後、使用しないものは解約手続き、使用するものは名義変更の手続きを取ります。

金融機関等には水道・電気・ガスなどの公共料金の振替が1つになった振替依頼書が用意されていることもありますので、名義変更に便利です。

  • 携帯電話: 引き続き利用したい場合には「承継」することができます。
  • 携帯会社に、死亡の事実を証明できる書類、携帯電話、承継者の本人確認書類を持参し、承継又は解約をします。
  • 水道光熱費: 水道やガスについては、電話などで名義変更ができます。また、電力料の名義変更は電話だけのところもあります。各会社によって取り扱いが異なっています。
  • クレジッドカード: クレジットカードの未払い残高は相続人が支払いをすることになります。既に口座凍結となっている場合は、相続人宛に手続きの依頼書等が届きます。速やかに解約するには、カード裏面記載の連絡先に連絡しましょう。

遺言書について

12: 遺言書の確認

遺言書を探す場合、まず公証役場に公正証書遺言が保管されているかどうかを確かめます。

最寄りの公証役場に聞けば、全国の公証役場をつなぐネットワークがあるためすぐに検索できます。

自筆証書遺言は、被相続人の自宅等で探すことになります。

被相続人の机やタンス、金庫などを探してもないときは、外部への保管依頼の可能性もあります。親しい友人、金融機関の貸金庫などをあたってみましょう。

分割協議成立後に遺言書が出てくると、協議のやり直しとなるのでよく探しましょう。

なお、最近はエンディングノートが出回っていますが、法的効力はありません。

また、2020年7月からは「遺言書保管法」により、法務局が自筆証書遺言を預かる新制度が始まります。

よって今後は、自筆証書遺言を法務局で保管しているケースも想定されるので確認してみましょう。

13: 遺言書の検認

自宅で遺言書が見つかっても、勝手に開けてはいけません。勝手に開けると、法律では5万円以下の過料が科されます。

見つけた遺言書は家庭裁判所に提出して、その検認を依頼しなければならないのです。

検認とは、家庭裁判所が遺言書を開封して、用紙、日付、筆跡、訂正箇所の署名や捺印の状況や遺言書の内容を確かめることです。

検認によって、その遺言書が変造、偽造でないことを確認します。

検認の申請時には、遺言書、申立人と相続人全員の戸籍謄本、遺言者の除籍謄本などが必要です。

封印のある自筆証書遺言や秘密証書遺言は、家庭裁判所での検認の際、相続人等の立会いのもとで開封します。

注意したいのは、検認が遺言内容の有効・無効を判断する手続ではないということです。検認を受けたことで、必ずしも遺言書が有効になるとは限りません。

相続人・相続財産について

14: 相続人の調査

相続の手続きの中で、相続人の調査に思いのほか時間を取られることもあります。

相続人の調査では、被相続人の出生から死亡までの全部の戸籍を取り寄せて、戸籍謄本や除籍謄本、改正原戸籍謄本を取得し、被相続人の親族関係を確認します。

これにより、この相続に係る相続人は誰であるかを確定します。

相続人であるはずの人がすでに亡くなっている時の代襲相続人などを含め、相続人が多数になることもあります。

被相続人の戸籍を確認する際、婚姻、離婚、養子縁組、転籍、認知などには特に注意しましょう。

15: 相続財産の調査

戸籍調査の次は、遺産調査です。被相続人の残した財産の調査をします。

まず、どのような財産があるのか「相続財産の存否調査」をし、その財産はどれだけあるのか「相続財産の評価」を行い、相続財産を確定させます。

財産には、積極財産(プラスの財産)だけでなく、消極財産(マイナスの財産もあり、どちらも相続財産です。

個人の場合、よくあるプラスの財産としては不動産と預貯金が、マイナスの財産としては借入金や未払金が挙げられます。

不動産を調査する方法の一つとして、「名寄帳」というものを役所で取得する方法もあります。

名寄帳には、その市区町村内にある課税不動産がすべて掲載されますので不動産の調査には役立ちます。

預貯金については、同じ金融機関であれば他支店口座も全店照会により調査する「名寄せ」が可能で、これによって複数口座があってもわかります。

また、口座が見つかった際には、死亡日当日時点の「預金残高証明書」をとっておくのもおすすめします。

ネット銀行の場合には預金通帳がないため、パソコンや携帯電話のメールなどから割り出す等、地道な捜査が欠かせません。

投資信託などの保有については、証券会社や信託銀行に取引口座があれば、「取引残高証明書」を取り寄せて保有している商品を突き止めることができます。

マイナスの財産として、借入金などの他に連帯保証債務等がないかに気をつけなければなりません。

16: 遺産分割協議の開始

一般に遺言書がない場合は、相続人による遺産分割協議によって、誰がどの財産をどれだけ相続するかを決めることになります。

相続人の中に未成年者がいる場合は、代理人を立てなければなりません。

通常は未成年者の代理人としては親となりますが、相続人に親が含まれている場合はその未成年の親は代理人になれません。

家庭裁判所に特別代理人の選任の申し立てをすることになりますが、その際、遺産分割案が必要となります。

また、相続人の中に認知症の人がいる場合には、代理人として成年後見人を立てますが、この成年後見人も相続人である場合は特別代理人が必要です。

そして、すべての相続人による分割協議がまとまると、遺産分割協議書を作成します。

その際、必要となるのは、被相続人の戸籍一式(除籍・改製原戸籍・現戸籍)、被相続人の住民票の除票と戸籍の附票、相続人全員分の戸籍謄本、相続人全員分の印鑑証明書などです。

残念ながら、相続人同士での遺産分割協議が不調に終わると、家庭裁判所の調停、審判、裁判とエスカレートします。

“期限”のある「相続放棄」「準確定申告」「相続税申告」

17: 「相続放棄」「限定承認」

相続財産の調査によって、借入金の額が大きい場合などに利用されるのが「相続放棄」や「限定承認」です。

相続放棄とは、相続人が被相続人の財産について相続の権利を放棄することであり、相続の放棄が認められた場合は、被相続人の借金を肩代わりせずに済みます。

相続放棄には期限があり、相続人が相続の開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。この3カ月を「熟慮期間」と呼びます。

相続放棄をすると、相続人はその相続について初めから相続人でなかったものとみなされますので、その後開催される遺産分割協議には参加しません。

また、限定承認とは相続財産の範囲内でのみ借金を返すという条件で相続を承認する手続きです。

しかしながら、限定承認を利用するための手続きは非常に複雑であり、実際の利用例は非常に少なく、現実的な借金回避策は相続放棄であるといえます。

18: 所得税の準確定申告

相続人は、1月1日から死亡した日までに確定した所得を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内に所得税の申告納税をしなければなりません。

これを「準確定申告」といいます。

準確定申告は、被相続人に事業所得や不動産所得などがあった場合だけが対象という訳ではなく、通常の確定申告が必要な場合には準確定申告が必要となります。

公的年金でも400万円を超えていたら準確定申告が必要となります。

通常の確定申告と異なる点は、申告は相続人全員で行う必要があること、所得控除等が死亡日までの計算になること、提出先は被相続人の住所地を管轄する税務署になることなどです。

もちろん通常の確定申告書と同様、税金が還付されるケースもあります。

19: 「遺産分割協議書」の作成

「遺産分割協議」とは、遺言書がない場合などに全相続人で遺産分割について協議することです。協議といっても、必ずしも全相続人が一堂に会す会議を開く必要はありません。

電話やメールなどでも問題ありません。

例として、被相続人が生前に話していたことや被相続人への貢献をもとに、誰か一人が分割内容を提案し、他の相続人が合意したり、代替案を示したりして決める方法が考えられます。

相続財産のうち、不動産は基本的には遺産分割時の価格、つまり時価で評価することとされています。

時価変動があるのは不動産だけでなく、有価証券等も時価で評価することとなります。

したがって、遺産の範囲に不動産のように時価が変わるものがある場合には予め、査定が必要となります。

協議内容がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書に相続人全員の署名押印し、相続人全員の印鑑証明書を添付します。相続人の数が多く、かつ、互いに離れて住んでいる場合には、相続人ごとに1通作成する「遺産分割協議証明書」が便利でしょう。

遺産分割協議証明書は、遺産分割協議の結果を記載し、相続人が署名押印したもの。何人もの相続人に遺産分割協議書を郵送で回していって……という手間はかかりません。

しかし、遺産分割協議証明書は相続人1人につき、1通作成するため、全員分の遺産分割協議証明書がそろわないと相続手続きはできないという短所もあります。

20: 相続登記

遺産分割協議書ができたら、次は「相続登記」です。

不動産登記とは、取得した不動産の情報と所有者の情報を法務局の登記簿という公的な帳簿に記載することです。

相続での登記は所有権移転登記となり、所有権を被相続人から相続人へ移転することになります。

登記がないと、取得した不動産についての所有権を第三者に対し主張できません。

つまりは取得した不動産を売却できず、賃貸に出す場合も円滑に進めることが難しくなります。

登記の流れとしては、まず、法務局に遺産分割協議書などの必要書類を提出すると、法務局での書類等の審査を経て、登記簿に記載されます。

そして、登記事項証明書や登記識別情報通知等を受け取ることができるようになります。

なお、登記には期限が設けられていません。

21: 相続税申告と納付手続き

各相続人の取得する財産が決まったら、相続税の申告・納付です。

相続税はすべての相続人が申告しなければならないということはなく、一定以上の相続財産がある場合に限られます。

相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10カ月後ですので、遺産分割協議などが長引いている場合には間に合わない可能性があります。

相続人や相続財産は確定していて分割ができていない場合に、未分割のままで申告することも可能です。その場合、相続税額を低くする相続税の特例を使えません。

また、相続税は延納や物納ができる場合があります。延納には担保が必要となり、さらに利子を支払うこととなります。

延納でも支払が難しい場合は、物納として相続財産である国債や不動産などで支払うこととなります。

延納や物納については、申請後、税務署の調査を受けたのちに許可されます。

相続税の申告書は、所得税などと違い添付資料も合わせると量的にも多いため、税理士に任せるにしても相当期間はかかると覚悟しましょう。

22: 遺留分侵害請求の手続き

民法では被相続人の兄弟姉妹を除く子・直系尊属・配偶者などの相続人に対して遺留分を認めています。

相続の内容について、遺留分(その相続人が最低限もらうことのできる財産)が侵害されていることがわかれば遺留分の請求ができます。

この請求のことを「遺留分侵害額請求」といいます。

遺留分は、遺留分を主張できる者が自己の遺留分について意思表示をしてはじめて保護される権利でもあり、相続後に発生の可能性のある手続きです。

遺留分には時効があり、相続又は遺留分侵害の事実を知ってから1年、又は相続開始から10年で権利を失効します。

しかし、遺留分侵害額を知ることが難しかったり、相続財産の全容が不明であったりしたときは、消滅時効は進行しないとされています。

遺留分侵害請求にあたっては、侵害の事実を実証しなければなりません。

相手が1人の場合はその事実を内容証明郵便で送り、理解してもらうことはできなくはありません。しかし、専門家に委ねるほうが早く進むでしょう。

申請すると支給されるものも

23: 葬祭費、埋葬料の申請手続き

「葬祭費」は、被相続人が国民健康保険の被保険者やその扶養家族だった場合、葬儀にかかった費用の一部が市区町村から支給されるもので、申請の必要があります。

支給金額は、自治体によって異なりますが、数万円です。

葬祭費を申請できるのは葬儀を行った日の翌日から2年間です。

また、「埋葬料」は健康保険組合に申請します。

被保険者が健康保険組合の被保険者やその扶養家族だった場合、同様に「5万円」支給されます。埋葬料の申請期限も死亡日の翌日から2年以内となっています。

税務調査の現状

24: 税務調査への対応

相続税は1件あたりの納税金額が大きく、税務調査率は法人税・所得税に比べて高くなっています。

国税庁が2019年12月にまとめた相続税の調査等の状況によりますと、調査総数の85.7%に申告漏れ等があったとされています。

加算税を含む追徴課税については、1件あたり約568万円であり、さらに刑罰的な重加算税が調査全体の16.5%で賦課されています。

また、税務調査に至る前の文書や電話などで申告漏れや計算間違いを是正する「簡易な接触」においても、同年においては1件あたり42万円の追徴課税がありました。

税務調査は、申告後2~3年すると2割以上の確率で実施されるといわれます。証拠となる書類は5年間保管しておきましょう。

25: 相続税軽減の手続き

相続税の申告期限までに個々の財産を誰が相続するか決まっていない状態で相続税の申告した場合、納税者に有利な特例計算を使えないものがあります。

その中でも、配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例はよくあるケースです。

相続税の配偶者の税額軽減とは、配偶者が相続した遺産の額が1億6,000万円まで、又は、配偶者の法定相続分までであれば、相続税が課税されない制度です。

また、小規模宅地等の特例は、一定の面積要件を満たした場合、土地の評価を最高8割減額することができる制度です。

これらは、最初の申告の際に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておき、相続税の申告期限から3年以内に分割された場合に適用を受けることができます。

また、例えば、相続人が未成年者の場合には未成年者控除、障害者の場合には障害者控除がそれぞれ適用され税額を減額できるのですが、申告の際にこれらの適用を失念したときは5年以内であれば還付は可能です。

26: 相続税の還付請求の手続き

支払い過ぎた相続税の還付は、更正の請求という手続きにより戻ってきます。

更正の請求は、最初に提出した申告が間違っており、税額を多く支払過ぎた場合に、税務署に減額を求める手続きです。更正の請求は相続税の申告期限から5年以内が提出期限となっています。

例えば、小規模宅地等の特例が3年以内の分割により適用できることとなった場合には、相続人全員の税額が変わってきますので、他の相続人にも更正の請求ができることを連絡しなければなりません。

また、遺留分侵害請求をされた相続人は財産の一部を返還するわけですから、更正の請求の対象となります。

反対に、支払った相続税が少ないことがわかった場合には、修正申告で納税となります。

相続については、相続人の調査や財産の調査が比較的早期に終わればゆとりをもって申告・納税ができます。

遺言書がある場合でも全相続人に納得できるものでなかったり、遺産分割協議が長引いてしまったりということはこの記事で予測がつきます。

しかし、特別受益と呼ばれる一部の相続人のみに被相続人から生前贈与があった場合などは、新たなの考慮が必要となるでしょう。

被相続人への貢献等も合わせて考えれば、「どこに公平性をおくか」については相続人同士でよく話し合いをし、それが難しければ弁護士等に相談するほかありません。

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執筆者プロフィール
岡 和恵
税理士。大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦7年。その後、システム会社に転職。システム開発部門と経理部門を経験する中で、税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

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