白色申告なら青色申告に変更した方が良い?白色申告と青色申告の違いとは?

更新日:2023.11.28

白色申告なら青色申告に変更した方が良い?白色申告と青色申告の違いとは?

個人事業主として事業を行っている方は、毎年確定申告が必要となります。この確定申告には「白色申告」と「青色申告」があります。

白色申告の方が簡単というイメージがあると思いますが、本当にそうなのでしょうか?

今回は、青色申告と白色申告の違いと、青色申告の始め方などをご紹介します。

1.確定申告は3つの種類に分かれている!

確定申告は「白色申告」と「青色申告」の2つですが、青色申告には10万円控除と65万円控除の2種類があるため、実質は3つに分かれていることになります。簡単に違いを見てみましょう。

―白色申告の特徴

白色申告で確定申告を行う場合には、特別な申請は必要ありません。確定申告時期に、確定申告書Bと収支内訳書を提出します。

事業を始めた際に青色申告承認申請書の提出をしていない場合は、自動的に白色申告になります。

―青色申告の特徴

青色申告で確定申告を行う場合には、「青色申告承認申請書」の申請が必要となります。青色申告承認申請書は、青色申告で確定申告をしようと思っている年の3月15日までに届出を行います。

事業を始めたばかりの方の場合は、事業開始日から2か月以内に申請を行います。

確定申告時期に、確定申告書Bと青色申告決算書を提出します。

―白色申告と青色申告(10万円控除)には大きな違いがない!!

白色申告の記帳は平成26年1月以前は、前年もしくは前々年の事業所得の合計が300万円を超えた方が対象でしたが、平成26年1月以降は事業・不動産貸付業等を行うすべての方に記帳および帳簿保管が義務付けられることになりました。

つまり、白色申告であっても帳簿作成と帳簿・書類の保管は必須となったのです。

白色申告の場合は、単式簿記(簡易帳簿)での作成でOKですが、青色申告にも単式簿記(簡易帳簿)があるため、白色申告と青色申告(単式簿記)に大きな違いがなくなってしまいました。

むしろ、10万円の控除が受けられる青色申告の方がお得なような気もします。

―単式簿記?複式簿記?―

単式簿記や複式簿記と言われても、ピンとこないという方もいらっしゃるでしょう。単式簿記と複式簿記の違いを簡単にご紹介しましょう。

〇単式簿記(簡易帳簿)

単式簿記(簡易帳簿)は非常にざっくりとお伝えすると、家計簿のような形です。取引の勘定科目を1つに絞って記帳していきます。

事業内容によって準備する帳簿は異なりますが、一般的な単式簿記(簡易帳簿)は「現金出納帳」「売掛帳」「買掛帳」「経費帳」「固定資産台帳」となります。

〇複式簿記

複式簿記では、仕訳帳と総勘定元帳というすべての仕訳を記帳した帳簿を作成します。仕訳帳は「日付毎」の取引を、総勘定元帳は「勘定科目毎」の取引をすべて記帳します。これらの帳簿から試算表や貸借対照表、損益計算書を作成します。

3.青色申告は3つの特典が付いてくる!!

記帳・帳簿保管が義務付けられたことによって、白色申告の最大のメリットだった色々簡単!が薄れてしまいました。

白色申告でも青色申告でもそれほど違わないなら、青色申告の特典を使えた方が断然お得です!ということで、青色申告の3つの特典をご紹介します。

特典1:青色申告と言えば「青色申告特別控除」

なんといっても「青色申告特別控除」です。青色申告特別控除は、記帳方法が複式簿記の場合は「最大65万円」、単式簿記の場合は「最大10万円」の所得控除を受けることができます。

特典2:青色事業専従者で家族の給与は経費算入!

白色申告では、配偶者など親族に支払った給与は必要経費にはなりません。その代わり「専従者控除」がありますが、専従者控除は配偶者で最大86万円、15歳以上の親族は最大50万円と上限が決められています。

しかし青色申告専従者給与は、全額経費として算入することができます。ただし、青色申告専従者給与に関する届出書の提出が必要となります。

特典3:赤字は3年間繰り越される!純損失の繰越しと繰戻し

赤字が出てしまった場合、その赤字を翌年以後3年間にわたって、所得金額から差し引くことができます。

例えば、去年赤字が200万円で、今年は300万円黒字になったとします。この場合、300万円から200万円を引いた100万円が所得税の課税対象となるということです!(←これが、純損失の繰越し!)

また前の年に青色申告を行っている方が、純損失の繰越しに代えて、その損失額を前の年の所得金額に繰り戻して控除することで、前の年の所得税額の還付を受けることも可能です(←これば純損失の繰戻し)

4.青色申告はどれくらいお得なのか!

青色申告にすることでどれくらいお得になるか、実際に例を使って考えてみましょう。

比較1:事業所得の違い

事業所得は、事業利益から妻の給与や特別控除等を差し引いて計算します。

白色申告では、妻の給与のうち86万円は事業専従者控除(配偶者)として差し引くことができるため、事業所得は514万円です。

青色申告の場合は、青色申告特別控除と、青色事業者専従者給与となる妻の給与を全額、事業利益から差し引くことが出来ます。

青色申告特別控除は単式簿記で10万円、複式簿記は65万円ですから、単式簿記の場合は事業所得が470万円、複式簿記の場合は415万円となります。

特別控除や妻の給与の扱いで、事業所得に大きな差が出ます!

比較2:課税所得金額の違い

比較1で算出した、事業所得から所得控除を引くと、課税所得金額が算出されます。所得控除の合計は143万円です。

課税所得は、所得税や住民税、事業税の金額が決まる大事な数字です。

比較3:空簿太郎さんが負担する税金の金額

課税所得が算出されたら、課税所得をもとに税金の計算を行います。最終的にどれくらい税金が変わるか算出してみましょう!!

空簿太郎さんが納める税金の金額は、白色申告と青色申告(単式簿記)では14万7,800円、青色申告(複式簿記)では25万9,000円の差が生じます!!何かを買うわけでもなく、ただ納める税金がこれだけ変わるのです!!

―奥様の税金も含めるとちょっと答えが変わります―

白色申告の場合、事業専従者控除として控除された金額、青色申告の場合、奥様の給与の額が、奥様の「給与所得」になります。

白色申告の場合、86万円の給与から給与所得控除(65万円)を差し引き、21万円が給与所得となります。

給与所得21万円から基礎控除38万円を差し引くと0となり、奥様の税負担は0円です。

青色申告の場合、120万円の給与から給与所得控除(65万円)を差し引き、55万円が給与所得となり所得税等の課税対象となります。

給与所得55万円から基礎控除38万円を差し引いた17万円が課税される所得金額となり、所得税額は8,600円(復興特別所得税含む)、住民税が24,500円となり、奥様の税負担額は33,100円です。

これを空簿太郎さんの負担する税額と合わせると・・世帯で負担する税額比較は以下の通りとなります。

白色申告は82万4,100円のまま変わりませんが、青色申告(単式簿記)は70万9,400円、青色申告(複式簿記)で59万8,200円となります。世帯で負担する税額で見ても、青色申告の方が断然お得ですね。

5.青色申告を始めたい!!

白色申告よりも青色申告の方がお得な訳ですが、今まで白色申告していた方が青色申告に切り替えることは出来るのでしょうか?

もちろん出来ます!!

青色申告で確定申告を行う場合には、「青色申告承認申請書」を管轄の税務署に提出する必要があります。

最初に青色申告の特徴で説明したように、青色申告で確定申告をしようと思っている年の3月15日までに、青色申告承認申請書を提出します。

例えば、平成29年分の確定申告を白色申告で行い、平成30年分の確定申告を青色申告でしたい!という場合には、平成30年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出すればよいのです。

ご家族に給与を支払う場合は、青色事業者給与に関する届出書も一緒に提出しましょう。

青色申告承認申請書・青色事業者給与に関する届出書は、国税庁HPからダウンロードすることが出来ます。

まとめ

個人事業主の方の確定申告には、白色申告と青色申告があります。平成26年1月以降は白色申告と青色申告(単式簿記)に大きな違いが無くなってしまいました。

青色申告に変更すると、青色申告特別控除を受けることができるなどたくさんの特典があります。抑えられる税金はなるべく抑えていきたいですね。

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