日本では婚姻の届出を提出し、夫婦になることで認められることが多くあります。しかし、近年では事実婚や同性婚など夫婦の形が多様化しています。
とは言え、法律的には「婚姻」と「内縁」では大きな違いが生じます。
特に、相続が発生した場合には、内縁関係という状態では遺産を相続することができない可能性があります。内縁関係の方が相続する場合の方法や注意点をご紹介します。
目次
1. 「婚姻」と「内縁」
「婚姻」とは、夫婦になる意思のある者同士が婚姻届を提出することで夫婦として認めてもらうことを言います。
民法では、婚姻について年齢や重婚の禁止、再婚禁止期限、近親婚等についての決まりが定められています。
一方、「内縁」とは婚姻届を提出していない者同士が夫婦と同じような状態であることを言います。内縁は事実婚という呼ばれ方もしますね。
内縁関係が成立する条件は下記の2つです。
ちなみに、内縁と同棲の違いは「婚姻を成立する意思」があるかどうかという点と言えます。婚姻届は提出していないけど、夫婦と同じような生活をしている場合には「内縁」と判断されることが多いです。
2. 内縁関係の効果
内縁関係の場合、婚姻と同様の扱いとなることと異なる扱いとなるものがあります。
2-1 婚姻と同じ効果が得られるもの
内縁関係であっても上記のように、婚姻関係と同様の義務が発生します。とくに貞操義務に関しては、婚姻届を提出していないから浮気しても良いとはなりません。
内縁関係が成立している2人の一方が浮気をした場合、もう一方は慰謝料を請求することもできるのです。
2-2 婚姻とは異なる扱いになるもの
内縁者は法定相続人にはなれない
内縁関係の一方が亡くなった場合、その方(被相続人)の法定相続人は配偶者と直系尊属、直系卑属、兄弟姉妹となります。
例えば、内縁の夫が亡くなったとしても、内縁の妻は配偶者ではありませんので法定相続人になることはできません。
子どもが生まれた場合「非摘出子」となる
内縁関係の2人の間に子どもが生まれた場合、非嫡出子という扱いになるため母親の戸籍に入ります。
しかし、父親である内縁の夫は、その子どもを認知するという手続を行わないと父子関係を成立させることができません。
また、認知を行わないと、子どもであっても父親の法定相続人になることができません。
3. 内縁者を相続人にするためには
普通に生活をする分には内縁関係でもそれほど支障は無いかもしれませんが、相続が発生した場合、内縁関係であることがデメリットになってしまいます。
内縁関係の場合、遺言による遺贈もしくは特別縁故者として相続権を取得するという方法で遺産を受け継ぐことが可能です。しかし、上記の2つには注意点があります。
3-1 遺言による遺贈の注意点
遺言を作成し、内縁者に遺産を遺贈する場合には「遺留分」に対して注意が必要です。
遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人(配偶者、直系卑属、直系尊属)に認められている最低限相続できる相続分を言います。もし、他に相続人がいる場合には遺留分を考慮した遺言を作成するようにしましょう。
遺留分についての詳細は下記をご確認ください。 |
3-2 特別縁故者として相続権を取得する
特別縁故者とは以下のように規定されています。
上記のような関係にあった方で家庭裁判所が特別縁故者として認めた場合には、特別縁故者として相続権を取得することができます。
内縁者が相続する場合、先にも述べたように法定相続人ではありません。そのため、相続税の2割加算の対象となる可能性があります。
4. 内縁関係でも受取ることができるもの
4-1 生命保険
内縁関係でも生命保険の受取人となることができます。しかし、何の証明もなしに受取人になることはできません。細かい規定は生命保険会社によって異なりますが、
上記を証明することができる書類等を提出できれば受取人になれるケースもあります。とは言え、通常の夫婦とは異なるため簡単に生命保険の受取人になることは難しいと言えます。
4-2 遺族年金
遺族年金も原則は配偶者に支給される年金となるため、内縁関係の場合には受取ることができないとされていますが、生命保険同様に内縁関係を証明する書類等を役所に提出することで受取ることが可能となるケースもあります。
5. 内縁関係の証明
内縁の場合、婚姻とは異なり役所等に届出を行っているわけではありません。そのため、法律上の夫婦とは異なり、内縁関係を証明するのは難しいように感じます。
内縁関係を証明する場合には、賃貸契約書の同居人に内縁の妻・夫などと記載しておくことや、同一住所で住民票登録を行う、お互いの収支が記帳されている通帳を作るなど、夫婦と同様の生活を送っていることを証明できるようにしておく必要があります。
また、親族等の証言によって内縁関係を証明してもらう方法も有効です。
6. まとめ
平均寿命も伸び、ライフスタイルも多様化している現代では、結婚という形にとらわれない内縁関係を選択している方も多いのではないでしょうか?
内縁関係であっても婚姻届を提出している夫婦と変わらない扱いとなることも多くありますが、相続などではまだまだ内縁関係のデメリットが多く存在します。
婚姻届の提出をする予定が無い場合には、相続についてもしっかりと考えておく必要がありますね。日頃からパートナーと未来のことをしっかりと話しておくようにしましょう。
また、遺産分割の実績が多い弁護士など専門家に相談することも1つの方法です。ぜひご検討を。
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