×

不在者財産管理人は相続人が見つからない場合に選任、そのデメリットとは

更新日:2021.01.27

不在者財産管理人は相続人が見つからない場合に選任、そのデメリットとは

家族が亡くなると、遺産分割の手続きには相続人全員が参加しなければなりません。相続人の中に連絡の取れない人が1人でもいると、いつまで経っても遺産の取り分を決められないのです。そこで、相続人がどうしても見つからない場合には、本人の代わりに不在者財産管理人が登場します。

不在者財産管理人とは?

不在者財産管理人とは、居所が分からず連絡もまったく取れない行方不明者(=不在者)の財産を、本人の代わりに管理する人です。

家族が行方不明のままでも、最後に住んでいた家や家財類の管理だけであれば、近しい家族だけで何とかこなせるでしょう。困った事態になるのは、別の家族が亡くなり、不在者が相続権を得た場合です。そのようなときには、代わりに遺産分割協議に参加したり、相続財産を管理したりする人が必要です。法令にのっとってこのように財産管理する人を、不在者財産管理人といいます。不在となった人の配偶者や相続人、債権者などの利害関係人の申し立てによって、家庭裁判所が選任します。

なぜ相続人の中に行方不明者がいると困るかというと、そのままでは遺産分割協議ができなくなるからです。遺産分割協議は法定相続人全員が揃って協議する必要があります。不在をいいことに勝手に遺産分割協議書を作成し、署名・捺印することは私文書偽造にあたり、民事上も、戻ってきた本人や利害関係者から損害賠償請求される可能性があります。何よりもモラルに反しますので、やってはいけません。

不在者財産管理人の制度を利用すれば、相続人の中に行方不明者がいたとしても、裁判所を通じて適法に相続手続きをすることができます。遺産分割や相続財産の売却などをするにあたっては、さらに「権限外行為許可」という手続きが必要です。

不在者があらかじめ財産管理人を置いたり、親権者や成年後見人などの法定代理人がいたりした場合には、不在者財産管理人を置くことはできません。

不在者財産管理人はどのようなケースで必要になるのか?

相続が開始されたケースに限らず、行方不明になった人の財産についてどうしても本人の対応が必要になった時は「不在者財産管理人」が必要です。

代表的な例として、預金に関する手続きで「本人かその代理人でないと対応できない」と窓口に断られたケースが挙げられます。他にも、債務者がお金を返さないまま行方不明になったケースでは、居所に放置された財産から勝手に債権回収することはできず、不在者財産管理人に債権者への分配手続きをしてもらうことになります。以下が不在者財産管理人が必要なケースの一例です。

  • 行方不明者名義の預金を下ろす場合
  • 行方不明者名義の不動産について、改築・増築・解体等をしたい場合
  • 行方不明者が借りたアパートについて、解約手続きをしたい場合
  • 債務者が行方不明になり、債権回収が難しくなった場合
  • 行方不明者の家族が亡くなり、遺産分割の手続きが必要になった場合

不在者財産管理人のメリットとデメリットは?

個人の生活で築かれる財産は、本人や周囲の人の予想を超えて膨大です。家族の一員が行方不明になると、残された家族に放置された財産を適切に管理するための負担が重くのしかかります。行方不明期間が長引けば、その間に親兄弟が亡くなり、法律上は原則として無効扱いになる「相続人不在のままの遺産分割」を進めなければならない問題もあります。

上記のような問題を解決してくれる「不在者財産管理人」ですが、メリットがある一方、居所に残された家族の立場で長期的に見ると、数多くのデメリットもあります。

不在者財産管理人のメリット

不在者財産管理人がついた場合のメリットは、行方不明になっている間の財産管理や遺産分割がスムーズに進む点です。以下、具体的なメリットを挙げます。

  • 本人の財産から滞りなく生活費を確保できる
  • 住居の荒廃や家賃滞納を防げる
  • 遺産分割がスムーズに進む

行方不明者の貯金がいつでも下ろせる状態になり、住居のメンテナンスも滞りなく進められる点から、居所が把握できていた時期と変わらない生活を送れるようになります。行方不明者の家族が亡くなった時も、不在者財産管理人が代理人として遺産分割協議書にサインすることで、本人不在のまま進めた相続手続きを無効とみなされずに済みます。

不在者財産管理人のデメリット

不在者財産管理人の問題は、自由に選んだり人を変えたりすることができないばかりでなく、申立人に費用負担が発生することもある点です。

  • 家庭事情を全く知らない第三者が選任されることがある
  • 「財産管理にかかる費用」が申立人負担になることがある
  • 選任から遺産分割の開始までに6か月程度時間がかかることがある
  • 1度選任されると、人を変えたり辞めさせたりすることは不可

以降で詳しく解説する4つのデメリットを考えると、遺産分割などの目的の手続きがスムーズに進むよう、信頼する士業を候補者に立てることをおすすめします。

デメリット: 見ず知らずの人が選任されることがある

第1のデメリットは「自由に選べない」点です。選任申立時に候補者を立てることはできますが、選ぶ権限は家庭裁判所にあります。候補者からではなく、見ず知らずの第三者にあたる人が選ばれることもあり得るのです。

全く知らない人が不在者財産管理人になる代表的なケースは、管理人候補者と行方不明者が揃って相続人になった場合です。この場合、遺産分割協議で利益相反(一方の利益がもう一方の損失に繋がる状態)の関係になることが問題になり、候補者は選任されません。公平性を保つため、家裁が把握している弁護士や司法書士などの候補者の中から選ばれます。

デメリット: 「財産管理にかかる費用」を負担しなければならないことがある

第2のデメリットは、行方不明者の財産の状況次第では「管理費用」を負担する必要がある点です。

不動産・株式などの有価証券・債務などは、管理にある程度の経費がかかります。不在者の預貯金だけでは経費をまかないきれない場合、選任申立をした人が負担しなければなりません。その額は、この後説明するように30万円〜100万円と高額です。

デメリット: 選任されてもすぐに遺産分割できるとは限らない

第3のデメリットは、不在者財産管理人が選任されたからといって、すぐに遺産分割手続きを始められるとは限らない点です。

遺産分割や相続財産の売却に必要な「権限外行為許可」には、目安として6か月ほど時間がかかります。つまり、本来なら亡くなってすぐ遺産をもらい受ける手続きを始められるにも関わらず、居所の知れない相続人に不在者財産管理人がつくケースでは、半年以上も手続きがストップしてしまう可能性があるのです。

許可が下りるまでの相続財産の扱い方については、トラブルを避けるため、士業に逐一アドバイスをもらうのが無難です。許可申請の時間そのものも、知識のある人物が選任された場合、短縮できる可能性があります。

デメリット: 1度選任されると他の人に変えられない

第4のデメリットは、不在者財産管理人の改任(他の人物に変更すること)は原則できない点です。

1度選ばれた管理人を改任する権限は、家庭裁判所にあります(民法第26条)。また、改任しようとする時に「行方不明者の家族との相性が良くない」といった事情はほとんど考慮されません。不在者財産管理人の法律上の目的は、あくまでも本人の利益を守ることにあるからです。

不在者財産管理人はどのように選ばれる選任される?

不在者財産管理人は、申し立て人や相続人などの利害関係者との関係を考慮して選任されます。本来、不在者財産管理人をつけるのは、不在者本人の財産を守るためです。本人と管理人の利益が相反するような場合は選任されません。

例えば、他の相続人は不在者の相続分を不当に少なくすることで、自分の取り分を増やすことになるので、原則的に不在者財産管理人になることはありません。利害関係者は申し立ての際に、候補者を挙げることができます。利害関係のない(相続人とならない)親族を希望することが多くなっています。適当な候補者がいない場合は、弁護士や司法書士などの士業が選任されることもあります。

そもそも不在者ってどういう意味?

不在者とは、「従来の住所又は居所を去り,容易に戻る見込みのない者」です。いわゆる行方不明者といえます。不在者財産管理人申し立ての際には、この「不在者」と「利害関係人」という言葉を理解しておく必要があります。

まず、不在者財産管理人を選任するためには次の2つの条件が必要です。

  • 不在者が財産の管理人を置かなかったこと
  • 利害関係人または検察官からの申し立てがあること

条件に出てくる「不在者」とは前述の通りですが、具体的には、家出や突然の失踪などで連絡がとれなくなり、親戚や本人の友人、職場関係者など各方面に問い合わせてみてもどこにいるのかわからない、といったような人です。生存が確認されているかどうかは問いませんが、死亡が証明されたり失踪宣告(長期の行方不明者を死亡したとみなす手続き)がされたりした人は、不在者にあたりません。最終的に家庭裁判所が、提出された資料を確認したり、申し立て人や不在者とされている人の親族から事情を聞いたりして判断します。

そして「利害関係人」とは、法定相続人をはじめ、法律上なんらかの利害関係がある人のことをいいます。友人や知人など、単純に不在者と関係しているというだけでは申し立てはできません。具体的には、配偶者、相続人にあたる子、債権者・債務者、財産の共有者などが挙げられます。

不在者財産管理人に選ばれる候補者は誰?

ここまでを整理すると、相続人と長期のあいだ連絡がとれない場合でも、不在者財産管理人をおくことで相続手続きを進められることがあります。

不在者管理人は、利害関係人の請求によって家庭裁判所が選任しますが、利害関係のない親族などの候補者を挙げることができます。適切な候補がいない場合、弁護士や司法書士などの法律の専門家が選ばれるのが一般的です。

不在者財産管理人は何をしなければならないのか?

不在者財産管理人に就任した方が最初にすることは、財産目録を作成し、裁判所に報告することです(民法27条)。不在者本人の財産を調査して一覧にし、家庭裁判所に報告します。1年に1回、といったように定期的に報告するように求められることもあります。これが不在者財産管理人の主な役割です。その他必要に応じて、管理行為を行います。

管理行為には、現状維持のための修繕や契約の更新などが挙げられます。一種の法定代理人とみなされ、誠実に注意深く仕事をする義務があります。管理する財産を着服したり、第三者と結託して不在者の不利益になるようなことをしたりすると、他の管理人に交代させられることがあります。そのほかにも、損害賠償請求されたり業務上横領の罪に問われたりする可能性があります。

遺産分割や財産の売却など、管理を超えた行為をするにあたっては、後述の「権限外行為許可」を受ける必要があります。

不在者財産管理人の仕事は、次に記載する場合に該当し、家庭裁判所に対して申立(不在者財産管理人選任処分の取り消し処分の申立)をすることにより終了します。

  • 不在者が戻ってきたとき
  • 不在者が死亡したとき
  • 不在者について失踪宣告されたとき
  • 不在者の財産がなくなったとき

不在者本人が戻ってきたときは、その本人に財産管理を引き継ぎます。死亡または失踪宣告の場合は、不在者の相続人に財産管理を引き継ぎます。

失踪宣告とは、行方不明者の生死が不明になってから相当の期間が経過した人について、法律上は亡くなったことにする、という制度です。相続人などの利害関係者が家庭裁判所に請求することで行われます。

遺産分割のために選任したからといって、遺産分割が終われば不在者財産管理人の仕事も終わり、というわけではないことに注意が必要です。

不在者財産管理人に報酬(費用)を支払う必要は? 予納金とは??

不在者財産管理人の選任を申し立てる時は、指定された申立手数料と合わせて「予納金」が必要になる場合があります。

予納金とは、今後の財産管理のための必要経費です。民法27条1項では、例えば「預金を下ろす時にかかる窓口手数料」や「不動産を売却するための査定費用」などの経費は、不在者本人の財産から支払われると決められています。本人の財産が少なく、管理経費をまかないきれないケースでは、不在者財産管理人の選任を申し立てる人から、あらかじめ裁判所にお金を預けておかなくてはなりません。この時預けるお金が「予納金」です。

また、不在者財産管理人は、裁判所に請求することで、報酬を得ることができます。報酬額は「不在者本人との関係性」「財産の規模」「管理の期間」「仕事の内容などを判断材料にして家庭裁判所を決め、本人の財産から支払われます(民法29条)。この管理人報酬に関しても、不在者の財産では支払えない場合、予納金から支払われます。

なお、管理経費と管理人報酬を支払い終えた段階で予納金に余りがある場合、選任申立をした人に返還されます。

不在者財産管理人の申し立て方法とは

不在者財産管理人の申し立ては、申し立てる権利を持った人が、必要な費用と書類を用意し、家庭裁判所に請求することで行います。

申し立て人

申し立ての権利がある人は、前述した不在者の利害関係人か検察官のみとなります。

申し立て先

申し立ての手続きは、不在者の従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所で行います。管轄区域については、裁判所のホームページで調べることができます。

必要な費用

申し立て時に必要な費用は以下の通りです。

  • 収入印紙800円分
  • 裁判所との連絡用郵便切手代。裁判所によって異なりますが、2千円くらいです。
  • 予納金(30万円〜100万円)

申し立てに必要な書類

家庭裁判所は、以上の書類を確認したうえで、もっともふさわしい人を不在者財産管理人に任命します。必要に応じ、申し立て人に対して書類や呼び出しにより質問することがありますので、対応できるようにしておく必要があります。以下が必要書類です。

  • 申立書: 書式と記載例が裁判所のホームページに掲載されています。申し立て人と不在者の住所氏名、申し立ての理由などを記載します。不在者財産管理人の候補者がいる場合にはここに記載します。
  • 不在者の戸籍謄本
  • 不在者の戸籍附票: 戸籍に住所が記載されたもののこと
  • 管理人の候補者がいる場合、その人の住民票又は戸籍附票
  • 不在の事実を証明する資料: 警察が発行する捜索願受理証明書、不在者宛に送られたが戻ってきた郵便物、関係者から事情を聞いた陳述書など
  • 不在者の財産に関する資料: 不動産の登記簿、通帳のコピーや残高証明書など、預貯金や有価証券などの残高が分かる書類
  • 利害関係人からの申立ての場合、利害関係を証明する資料: 戸籍謄本、契約書のコピーなど

不在者財産管理人が遺産分割協議に参加するために必要な手続きとは?

前述のとおり、不在者財産管理人は、遺産分割や財産の売却など、法定代理人の権限を超える行為をする場合には別途、家庭裁判所の許可を得なければなりません(民法28条)。

手続きをするには、不在者財産管理人の申し立てとは別に、不在者財産管理人の権限外行為許可の申立書を裁判所に提出します。添付書類として、遺産分割の場合は遺産分割協議書案、財産売却の場合は売買契約書案を裁判所に提出します。不当に低い金額で売買する、といったような不正を防止するための資料です。

まとめ

不在者財産管理人は、相続人の中に、家出や突然の失踪などで連絡が取れなくなり、親戚や本人の友人等に問い合わせてもどこにいるのかさっぱりわからない、という不在者がいた際に選任する人のことです。不在者に代わって遺産分割協議に参加したり、法令にのっとって相続財産を管理したりする人で、家庭裁判所への申し立てが必要となります。

遺産分割協議は相続人全員が揃って行う必要があり、不在だからと他の相続人が勝手に遺産分割協議書を作成して署名・捺印すると私文書偽造となるため、絶対にやってはいけないということを覚えておいてください。

執筆者プロフィール
遠藤秋乃
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年に司法書士資格・2016年に行政書士資格を取得。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。

「つぐなび」の運営は、1970年創業の株式会社船井総研ホールディングス(東証1部上場、証券コード:9757)の経営コンサルティング事業を担う株式会社船井総合研究所が行っています。…もっと見る

船井総合研究所は、相続分野において700事務所にものぼる全国の弁護士・税理士・司法書士といった士業事務所のコンサルティングを行っており、その長年のノウハウをもとに「つぐなび」を2020年に開設いたしました。
現在、全国的に高齢人口の急速な増加を続けており、総人口は減少していく一方で、高齢者人口は2040年まで増え続けると予測されています。それに伴い、相続財産をめぐるトラブルも増加、複雑化していることが喫緊の課題となっており、さらに、問題を未然に防ぐための遺言や民事信託などの生前対策のニーズも年々高まっています。 「つぐなび」では、相続でお困りの皆様が、相続の”プロ”である専門家と一緒に相続の課題解決をしていけるようサポートいたします。

・本記事は一般的な情報のみを掲載するものであり、法務助言・税務助言を目的とするものではなく、個別具体的な案件については弁護士、税理士、司法書士等の専門家にご相談し、助言を求めていただく必要がございます。
・本記事は、本記事執筆時点における法令(別段の言及がある場合を除き日本国におけるものをいいます)を前提として記載するものあり、本記事執筆後の改正等を反映するものではありません。
・本記事を含むコンテンツ(情報、資料、画像、レイアウト、デザイン等)の著作権は、本サイトの運営者、監修者又は執筆者に帰属します。法令で認められた場合を除き、本サイトの運営者に無断で複製、転用、販売、放送、公衆送信、翻訳、貸与等の二次利用はできません。
・本記事の正確性・妥当性等については注意を払っておりますが、その保証をするものではなく、本記事の情報の利用によって利用者等に何等かの損害が発生したとしても、かかる損害について一切の責任を負うことはできません。
・本サイトの運営者は、本記事の執筆者、監修者のご紹介、斡旋等は行いません。
…閉じる