遺産分割による相続争いは年々増加傾向にあり、平成25年の遺産分割による調停・審判の新受件数は約1万5千件に上ります。
遺産分割による相続争いが起こる原因は、相続財産に「不動産」が含まれているケースで多く発生しているという意見もあります。
特に、相続財産が不動産のみ(その不動産は被相続人が居住していた自宅)という場合が相続争いが起こりやすい状態と言えます。
つまり、資産をたくさん保有している富裕層よりもごく普通の一般家庭の方が相続争いに発展する可能性は高いと言えます。その争いで『調停』でも解決しそうにない場合には、『審判』で決着をつけることとなります。
「遺産分割調停でも解決しなそうな争いが発生している」あるいは、「今後発生する可能性のある方」はぜひご覧ください。相続争いはもはや他人事ではありません!
1. 遺産分割審判とは?
被相続人(相続財産を残して亡くなった方)が亡くなり、その遺産の分割について相続人間で遺産分割協議(遺産をどう分割するかの話合い)がまとまらない場合には一般的には、まず家庭裁判所の遺産分割の調停を行い、調停でも解決しない場合には、審判の手続を行います。
2. 審判手続とは?
調停手続きを行っても、話合いがまとまらず、調停が不成立となった場合、次の段階として審判手続が開始されます。
裁判官が遺産に属する物または権利の種類等の事情を考慮して、審判を行います。
2-1 調停から審判への移行について
調停から審判へ移行する場合、その事件(争い)は、遺産分割『審判』に自動で移行されることとなります。
2-2 審判期日に出頭する
遺産分割審判に移行した際は、家庭裁判所によって審判期日が指定されます。その指定された日に家庭裁判所へ出頭します。
2-3 審判における各相続人の主張
審判手続では、訴訟と同様に、各相続人が、書面で事実を主張し、その事実を裏付ける書類や資料を提出します。
各相続人の主張が終了するまで、審判手続は何度も行われます。
2-4 審判での話し合いで和解した場合
審判手続においても、当事者で話し合いでの解決ができる場合には、調停に付され、合意ができた場合は調停が成立したものとして審判手続きは終了します。
2-5 審判での話し合いでは和解出来なかった場合
話し合いで解決しない場合には、家庭裁判所が審判をします。言い換えれば、裁判所に判断を決められることとなります。
2-6 裁判所の審判(決定)に不服がある場合には?
遺産分割の審判は、その告知の日の翌日から2週間で確定することとなります。
しかし、この確定事項(審判)に不服があるときは,2週間以内に不服(即時抗告)の申立てをすることができます。
2-7 審判の不服申立の注意事項
不服申立の期間は2週間以内です。もし一日でも遅れてしまうと不服申立ができなくなってしまいますので、注意が必要です。
また、不服(即時抗告)は高等裁判所宛の書類を家庭裁判所に提出します。
書類の宛先は高等裁判所宛となりますが、書類の提出先は家庭裁判所になりますので提出する方は注意しましょう。
2-8 抗告審の審理(裁判官が事実関係を明らかにすること)とは?
① 家庭裁判所で行った主張を同じことの繰り返しに過ぎないなどの場合には、抗告はただちに棄却されます。
② ①とは異なり、抗告に理由があると考えられる場合には、抗告状と抗告の理由書が相手に届きます。相手は抗告の理由に対して反論をすることとなります。
③ 審理を行った後に、抗告審としての決定が出されます。
④ 高等裁判所が抗告の手続きを調停の手続きに変更することができます。この場合には,調停手続が優先され、調停が成立しない場合には抗告審の判断がなされることとなります。
⑤ 高等裁判所の判断に対して、不服がある場合には、さらに最高裁判所に特別抗告・許可抗告をすることもできますが、最高裁判所への不服申立で結論が変わることはほとんどないでしょう。
3. 遺産分割審判の管轄とは?
審判手続きの際の管轄は、被相続人の住所地、または相続開始地の家庭裁判所です。
4. 遺産分割審判を欠席することはできるのか?
審判手続きでは、 家庭裁判所の裁判官が双方から事情を聞いて、審判(決定)してしまうことから、欠席者がいても手続きは進行します。
注意点としては、遺産分割「調停」は話し合いで合意することを前提に進めますが、「審判」は裁判官が事情を聞いて決定するため、本人の主張によって把握できる寄与分など(法律で定められた相続割合を超える分など)、欠席してしまうと一切主張しないこととなるため、不利になる可能性がありますので気をつけましょう。
5. まとめ
相続財産を争う場合に、『調停』でも解決できない場合には、『審判』で決着をつけることとなります。
『調停』についても『審判』についても難しい法律が絡んできますので、弁護士さんにご相談の上、どのようにしていけば良いのかを相談すべきではないでしょうか。
この記事の監修者
鴻陽法律事務所 代表 鈴木 和貴
1999年 名古屋大学法学部卒業
2002年 名古屋大学大学院法学研究科修士課程修了
2005年 司法試験合格(旧司法試験・旧60期)
2007年 弁護士登録(愛知県弁護士会)
2011年 鴻陽法律事務所開設