相続した不動産の名義変更(相続登記)するために必要な知識

更新日:2024.06.21

相続した不動産の名義変更(相続登記)するために必要な知識

不動産を相続した場合には、名義変更(相続登記)をしなければなりません。

相続登記をするために必要な知識をまとめておりますので、不動産を相続した際に、自分で相続登記したい又は、どんなことをする必要があるのか知りたい方は是非ご覧ください。

1.相続時に必要な登記とは?

相続登記の意味の説明イラスト

不動産をもっている方が死亡し、相続が開始すると、その相続人に所有権が移転します。その際に、不動産の名義を変更する必要があるため、相続登記の手続きが必要となります。
相続登記をしなければならない期限はないのですが(本記事執筆時点では相続登記の義務化はされていない前提となります)、被相続人名義のままではその不動産を売却したり、担保に入れることもできませんので早めに相続登記を行う必要があるでしょう。
つまり、自宅や、マンションをもっている人が亡くなった場合には相続登記(名義変更)は必ず必要になると理解しておいてください。

2.相続登記はいつまでに行うのが理想か?

相続登記のタイミング

毎年1月1日現在の固定資産の所有者に固定資産税の請求がされます。そのため、年内に相続登記の手続きを行うことが理想的です。
もちろん、相続が発生してすぐに行うのがもっとも理想ですが。

(1)土地などの不動産をすぐに名義変更(相続当期)すべき理由

  • 名義変更しないと相続した土地の売却ができない
  • 名義変更しないと相続した土地を担保にして融資を受けることができない
  • 名義変更しないと相続した土地を貸すことができない
  • 名義変更しないと相続した土地の上に家を建てることができない
  • 名義変更しないと相続したはずの土地、勝手に売られてモメる可能性がある

(2)すぐに名義変更しないことで争いが発生した事例

名義変更が後ましで争いの例の登場人物紹介

父は、今年の1月に死亡し、保有していた土地80坪は、兄が相続することに決まっていました。

兄は、父が死亡してから、お墓の手配、仏壇の購入など、やることが多く、土地の名義変更を後回しにしていました。

兄は、将来80坪の土地に投資用不動産を建築し、将来の年金代わりにしたいと検討していました。

しかし、名義変更を後回しにしていた結果、最悪の事実が発覚します。投資不動産を建築予定だったにも関わらず、弟が許可もなく80坪のうち60坪の土地を売却していました。

名義変更が後回しで争いの例①弟に裏切られる

残り20坪の土地では、投資用の不動産も建築できず、かつ、20坪の土地は、活用しにくいため、売却も難しくなりました。

もちろん売却できなければ、その土地の固定資産税は兄が支払わなければなりません。

名義変更が後回しで争いの例②兄の悲劇

このような最悪な事例もありますので、不動産を相続した場合には、少しでも早く名義変更(相続登記)するべきでしょう。

(3)土地の名義変更を遅らせたほうがよいケースもある!?

ここまでで、名義変更はすぐ行うべきだ!とご紹介しましたが、名義変更を遅らせた方がよいケースもあります。

【土地を複数の方で相続する場合には、名義変更は遅らせた方がよい!?】

土地を複数の方で相続する場合、先に名義変更をしてしまい、相続税の申告と少しでもズレがあると、小規模宅地等の特例を使えたはずなのに使えなくなるというケースが発生する可能性があります。

小規模宅地等の特例を利用することで、多額の節税ができるケースがあるのです。

名義変更を先にしてしまった結果、この節税スキームを利用できなくなる可能性があるのです。

そのため、土地を複数の方で相続する場合には、

相続税申告終了後に名義変更しましょう

相続専門の税理士でない方がアドバイスした結果、大損していた方もいらっしゃるので、土地を複数の方で相続する場合には、名義変更のタイミングには注意しましょう。

3.司法書士さんに頼む場合に必要な資料は?

一般的に相続登記を司法書士にご依頼した場合には、下記が主な必要書類となります。司法書士事務所によって多少異なるかと思いますので、頼む際には、お願いする司法書士に念のため確認してください。

  • 印鑑
  • 被相続人の亡くなった旨の記載のある戸籍謄本や住民票除票  1通
  • 不動産の所在の分かる書類(権利書もしくは固定資産税の通知書) 1通
  • 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割の場合) 各1通
これら以外にも必要な資料がたくさんあるのですが、司法書士さんがすべて資料を揃えてくれるケースが多いため、上記資料のみを集めることが出来れば作業は終わりになるでしょう。

4.ご自身で相続登記するための必要書類とは?

 相続登記に必要な書類は以下の通りです。ケースによっては追加で必要な書類が発生することがあります。また、遺言書がある場合も、必要書類が変わってきます。

(1)亡くなった方の書類

書類
理由
被相続人については、出生時から死亡時までの連続した戸籍(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本等)のすべてが必要
戸籍謄本※1は、相続人を確定するために必要です。被相続人の記載のある戸籍謄本は1通ではありません。
たとえば、転籍や婚姻などをされている場合、転籍前や婚姻前の本籍地所在地の市区町村で、除籍謄本※3や改正原戸籍謄本※4を取得しなければなりません。
また、現在の戸籍謄本がコンピューター化されている場合、コンピューター化前の改製原戸籍謄本も取得しなければなりません。
一般の方でも取得できますが、何回も転籍されているような場合には、手続きはかなり煩雑になる可能性があります。
住民票の除票または、戸籍の附票の除票
被相続人を住所と氏名及び本籍地で特定するためです。

※1 戸籍謄本とは、戸籍内の全員の内容を複写した書面のこと(電算化された横書きの戸籍が導入されている自治体では,戸籍全部事項証明書といいます。)

※2 戸籍抄本は、戸籍内の一部の記載内容を証明するものですが,家庭裁判所の手続では使えません。間違って請求しないようご注意ください。

※3 除籍謄本とは,戸籍内の全員がその戸籍から抜けた状態の戸籍をいいます。(電算化済みの自治体では,除籍全部事項証明書といいます。)

※4 改製原戸籍謄本とは,戸籍制度の改正により戸籍のスタイルが変更された際 の書換え前の戸籍謄本をいいます。
明治時代の初めに全国統一の戸籍が作られ てから現在までに何度か戸籍制度が改正されていますが、そのたびに書換え前の戸籍は、すぐに破棄されず改製原戸籍と呼ばれて保管されてきました。
戸籍が改製されると、書換え前の戸籍に書かれていた記載の一部が省略されますし、最新の戸籍には載っていない情報が除籍謄本から見つかる場合もありますので、相続関係の手続では、ほとんどの場合、改製原戸籍謄本や除籍謄本を入手する必要があります。

(2)相続人の方の書類

書類
理由
相続人全員の戸籍謄本
相続人であることを証明するために必要です。
遺産分割協議書
(注意点)相続人全員の印鑑証明書を付けて下さい。
相続分以外の割合で相続する場合には必要となります。
財産を取得する人の住民票
住所を特定するために必要となります。
財産を取得する人からの委任状
司法書士に相続登記の手続き一切を任せる場合必要になります。(頼まない場合には不要です)
相続する不動産の固定資産評価証明書(最新版)
登録免許税を計算するために必要となります。
相続する物件の登記簿謄本
相続登記申請の前に、不動産を特定したり、被相続人名義の不動産かどうかを確かめるために必要となります。

5.相続登記費用は?

(1)すべて自分で行う場合

項目
全額
登録免許税
固定資産税評価額×0.4%
戸籍謄本取得
450円
除籍・原戸籍取得
750円
住民票
約300円
評価証明書
約300円
登記簿謄本
不動産数×600円
交通費
取得するための移動費
※ 上記の金額はおおよその目安です。

(2)司法書士に頼む場合

事務所によって異なりますので、頼む際の参考にしてください。
通常の親子相続で不動産が1つという場合には、上記(1)にプラス約10万程度が相場のようです。ネットで検索すれば料金表は出てくるかと思いますので、検索してみてください。

6.相続登記申請書の記載例とは?

法務局のHPに申請書の様式・記載例および手続き方法があります。

(1)不動産を法定相続分のとおりに相続した場合の申請書の様式・ 記載例
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/000130954.pdf

(2)不動産を遺産分割協議によって相続した場合の申請書の様式・ 記載例
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/000130955.pdf

詳しい手続き方法はこちらをご覧ください。
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/fudousantouki.html

7.相続登記するまでの全体の流れは?

不動産登記の流れ

相続登記については、法務局のHPに細かく詳細が記載されておりますので、そちらを参照ください。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji72.html

まとめ

相続登記はとても大変です。もし自分でやる場合には、不慣れなこともあり、大体資料を集めるのに数週間はかかります。
さらに、戸籍を何度も変更している方がいる場合にはさらに時間を要する可能性があります。
もちろん法務局のHPをゆっくり読みながら資料集めや、資料作成をおこなえばご自身でもできますが、非常に手間がかかるでしょう。
10万円程度はかかってしまいますが、司法書士にお願いしてしまった方が、楽なので頼んでしまったほうが良いのではないでしょうか。
 
 

この記事の監修者

 

代表社員 市山 智

所属事務所:司法書士法人・行政書士 オールシップ

保有資格:司法書士・行政書士

早稲田大学法学部 卒業

千葉司法書士会会員、千葉県行政書士会会員

公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート会員

一般社団法人日本財産管理協会会員

 

司法書士法人・行政書士 オールシップが運営する浦安・市川相続遺言相談室のオフィシャルサイトはこちら>>>

この記事の執筆者:つぐなび編集部

この記事は、株式会社船井総合研究所が運営する「つぐなび」編集部が執筆をしています。
2020年04月のオープン以降、専門家監修のコラムを提供しています。また、相続のどのような内容にも対応することができるように
ご希望でエリアで司法書士・行政書士、税理士、弁護士を探すことができます。

相続コラムを探す×
カテゴリを選ぶ
お近くで相続に強い専門家をお探しの方は おすすめ検索
専門家を
お選びください
地域を
お選びください
相談内容を
お選びください

「つぐなび」の運営は、1970年創業の株式会社船井総研ホールディングス(東証1部上場、証券コード:9757)の経営コンサルティング事業を担う株式会社船井総合研究所が行っています。…もっと見る

船井総合研究所は、相続分野において700事務所にものぼる全国の弁護士・税理士・司法書士といった士業事務所のコンサルティングを行っており、その長年のノウハウをもとに「つぐなび」を2020年に開設いたしました。
現在、全国的に高齢人口の急速な増加を続けており、総人口は減少していく一方で、高齢者人口は2040年まで増え続けると予測されています。それに伴い、相続財産をめぐるトラブルも増加、複雑化していることが喫緊の課題となっており、さらに、問題を未然に防ぐための遺言や民事信託などの生前対策のニーズも年々高まっています。 「つぐなび」では、相続でお困りの皆様が、相続の”プロ”である専門家と一緒に相続の課題解決をしていけるようサポートいたします。

・本記事は一般的な情報のみを掲載するものであり、法務助言・税務助言を目的とするものではなく、個別具体的な案件については弁護士、税理士、司法書士等の専門家にご相談し、助言を求めていただく必要がございます。
・本記事は、本記事執筆時点における法令(別段の言及がある場合を除き日本国におけるものをいいます)を前提として記載するものあり、本記事執筆後の改正等を反映するものではありません。
・本記事を含むコンテンツ(情報、資料、画像、レイアウト、デザイン等)の著作権は、本サイトの運営者、監修者又は執筆者に帰属します。法令で認められた場合を除き、本サイトの運営者に無断で複製、転用、販売、放送、公衆送信、翻訳、貸与等の二次利用はできません。
・本記事の正確性・妥当性等については注意を払っておりますが、その保証をするものではなく、本記事の情報の利用によって利用者等に何等かの損害が発生したとしても、かかる損害について一切の責任を負うことはできません。
・本記事を含むコンテンツの一部については、生成AIを利用して作成しております。
・解決事例は、個人が特定できないように一部改変して掲載しています。
・本サイトの運営者は、本記事の執筆者、監修者のご紹介、斡旋等は行いません。
・情報収集モジュール等に関する通知・公表
当社は、本サービスの提供にあたり、利用者の端末に保存された情報を外部サーバーに送信するクッキー、コード、又はプログラム等(以下総称して「情報収集モジュール等」といいます。)を利用します。
当社が利用する情報収集モジュール等の詳細は、以下の通りです。

【情報収集モジュール等の名称】
TETORI
【送信される情報の内容】
https://adm.tetori.link/manual/view/realtime_user
【情報送信先となる者の名称】
グルービーモバイル株式会社
【当社の情報の利用目的】
サイト分析
【送信先での情報の利用目的】
https://www.groovy-m.com/privacy

閉じる

お近くで相続に強い専門家をお探しの方は おすすめ検索
専門家を
お選びください
地域を
お選びください
相談内容を
お選びください

閉じる

閉じる

早期解決や相談先のヒントに! 解決事例検索
テーマを
お選びください

閉じる

閉じる

相続について広く理解を深めたい方は コラム検索
カテゴリを
お選びください

閉じる

閉じる