相続放棄した空き家は誰が解体するの? 相続放棄後の流れも解説

更新日:2025.04.24

相続放棄した空き家は誰が解体するの? 相続放棄後の流れも解説

いらない空き家を相続したくない場合、相続放棄をすることが選択肢になります。相続放棄をした空き家は、誰が所有することになり、解体するのでしょうか。

今回は、空き家を相続放棄した後の所有権や解体について、わかりやすく解説していきます。

1.相続放棄した空き家は、所有権と管理(保存)責任が他の相続人に移る!

相続放棄をした場合、空き家の所有権と管理責任は他の相続人(次順位に相続人となる者)または国に移ります。

相続放棄した者についての管理(保存)責任は、2023年4月の民法改正により、相続放棄した時点で空き家を占有している(住んでいるなど)相続人が管理責任を負うことが明確にされ、空き家を占有していない相続人については、管理責任が生じないこととなりました。

※2023年4月の民法改正により「管理義務」がから「保存義務」へ呼称が変更されています。

所有権は、以下の順序で移っていきます。

  1. 他の相続人:相続放棄をした人以外の相続人(次順位に相続人となる者)がいる場合、その相続人に所有権が移ります。
  2. :他の相続人も全員相続放棄をした場合、最終的に国が所有権を取得します。

管理責任も、所有権と同様に、他の相続人、または国に移ります。管理責任には、以下のような義務が含まれます。

建物の維持管理: 修繕、清掃などを行い、建物を良好な状態に保つ必要があります。

固定資産税の納付: 所有者は、毎年固定資産税を納める必要があります。

周辺住民への安全対策: 倒壊や火災などの危険がないよう、適切な安全対策を講じる必要があります。

2.相続放棄後の空き家の解体は誰がするのか?

相続放棄をしていない相続人がいる場合、空き家の解体は所有者であるその相続人が決定します。相続人全員が相続放棄した場合、状況はいくつか考えられます。

まず、相続人不存在確定後に自治体が解体するケースがあります。これは、相続放棄をしただけでは相続財産はすぐに国庫に帰属するわけではなく、相続人不存在が確定した後に国庫に帰属するためです。

相続人不存在を確定させるには、相続財産清算人(相続財産管理人)の選任が必要となります。相続人不存在が確定すれば、空き家は国の財産となり、不要であれば解体されることになります。

次に、行政代執行による自治体による解体も考えられます。相続財産清算人を選任しなくても、法律の要件を満たす空き家であれば、自治体は行政代執行により解体できます。

この方法であれば、相続人不存在の確定を待つ必要はありません。

さらに、空き家の買い手(引取手)が解体するか決める場合もあります。相続人全員が相続放棄した後、空き家の買い手が見つかることもありますが、売却には相続財産清算人の選任が必要です。

売却後の解体は、新しい所有者が決定します。

3.空き家の解体費用と相続財産清算人の予納金について

空き家を相続放棄した場合、その後の空き家の管理や処分には、解体費用と相続財産清算人の予納金という、二つの大きな費用が発生する可能性があります。これらの費用について、詳しく解説します。

空き家の解体費用

空き家の解体費用は、建物の構造、面積、立地条件などによって大きく変動します。

特に、道幅が狭く重機が入れない場所や、アスベスト含有建材が使用されている場合は、解体費用が数百万円単位の高額になることがあります。

解体費用の見積もりは、複数の解体業者から取ることをお勧めします。

解体費用を抑えるために、自治体の補助金制度を利用できる場合があります。お住まいの自治体に確認してみましょう。

相続財産清算人の予納金

相続人全員が相続放棄した場合、空き家の管理や処分を行うために、家庭裁判所は相続財産清算人を選任します。

相続財産清算人の選任申立てには、申立人が予納金を納める必要があります。

予納金の金額は、相続財産の規模や複雑さによって異なりますが、一般的には50万円から100万円程度です。

予納金は、相続財産清算人の報酬や、財産調査、官報公告などの費用に充てられます。

解体費用に直接充てられるものではないので、注意が必要です。

相続財産清算人の選任方法

相続財産清算人の選任は、家庭裁判所に申立てる必要があります。

申立ては、相続放棄をした人、または利害関係人(債権者など)、検察官が行うことができます。

申立てに必要な書類は、家庭裁判所のウェブサイトで確認するか、弁護士や司法書士に相談してください。

相続財産清算人が選任されると、相続財産清算人は、相続財産の管理、債権者への支払い、残った財産の国庫への引き継ぎなどの業務を行います。

予納金を払うのは誰か

相続財産清算人の選任の申立人が、予納金を払う必要があります。

相続放棄をした人が申立人になる場合、相続放棄をした人が予納金を負担することになります。

注意点

相続放棄をしても、空き家を現に占有していた相続人については、管理責任がなくなるわけではありません。他の相続人や相続財産清算人に引き渡されるまでは、相続放棄をした人が管理責任を負う場合があります。

空き家が原因で近隣に損害を与えた場合、相続放棄をした人も管理責任が生じていれば、損害賠償責任を負う可能性があります。

4.相続放棄という選択肢:メリットとデメリット

相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の財産を一切相続しないという手続きです。

空き家を相続放棄するメリット

負債を相続しない

相続放棄をすれば、親が借金を残していた場合でも、その返済義務を負う必要はありません。

空き家の管理責任から解放される

相続放棄をすれば、遠方に住んでいたり、忙しくて管理ができない場合でも、空き家の管理責任を負う必要はありません。

精神的な負担を軽減できる

空き家の存在がストレスになっている場合は、相続放棄をすることで、精神的な負担を軽減することができます。

空き家を相続放棄をするデメリット

プラスの財産も相続できない

預貯金や土地など、プラスの財産も相続することができなくなります。

手続きに費用と時間がかかる

相続放棄の手続きには、費用と時間がかかります。自分で相続放棄をする場合と、弁護士・司法書士に依頼する場合とで費用が異なるので調べておくと良いでしょう。

他の相続人に迷惑をかける可能性がある

あなたが相続放棄をすると、他の相続人がより多くの相続財産を相続することになったり、管理責任を負うことになったりする可能性があります。

5.空き家を相続放棄する際によくある質問

Q.相続放棄をすると、空き家の管理(保存)責任はどうなる?

相続放棄をすると、原則として相続人はその財産(空き家を含む)の所有権を失います。

管理責任については、空き家に住んでいるなど、相続放棄した時点で占有している場合は、次の相続人が現れるまで、または相続財産清算人が選任されるまでは、一定の管理義務が残る場合があります。

遠方に住んでいるなど空き家を占有しているといえない相続人については、相続放棄することで管理責任はなくなります。

相続において、長男や長女であると、管理業務を任せられる可能性が一般的に言えば高いですが、自分がどのような立場なのか調べておくと良いでしょう。

Q.相続放棄後、空き家の処分はどうなる?

相続放棄をすると、相続人は空き家を自由に処分することはできません。相続財産清算人が選任され、その清算人が空き家を処分することになります。

Q.空き家を相続放棄した場合、固定資産税の支払いはどうなる?

相続放棄をすると原則として固定資産税を支払う必要はなくなります。ただし、固定資産課税台帳に登録された場合など、一定の要件のもと固定資産税の納税義務が発生する場合があります。

Q.相続放棄後に空き家が原因で近隣に損害を与えた場合、責任は?

相続放棄をしたとしても、民法940条の規定により相続放棄後も相続財産を管理する義務が生じた相続人については、損害賠償責任を負う可能性があります。

Q.相続放棄を検討しているが、空き家の状態が悪く、費用がかかりそう。どうすればいい?

相続放棄の前に、専門家(弁護士、司法書士など)に相談し、空き家の状態や費用、相続放棄後の管理責任などについて詳しく確認することをおすすめします。

Q.相続放棄の手続きはどのように進める?

相続放棄は、相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述する必要があります。必要書類を準備し、期限内に手続きを行う必要があります。

Q.空き家問題と相続放棄の関係性は?

相続放棄を選択するのは、空き家を相続することで、管理や費用の負担が生じるためという場合があります。しかし、相続放棄をしても管理責任が残る場合があるため、注意が必要です。

6.まとめ

空き家を相続放棄すると、所有権と管理責任は他の相続人、または国に移ります。

解体するのは、相続人がいる場合はその人が、全員が放棄した場合は、相続人の方が誰もいないと確定してから自治体が解体したり、行政が代わりに解体したり、買い手が見つかればその人が解体したりと、状況によって変わります。

相続放棄には、借金を引き継がずに済んだり、管理の心配がなくなったりという良い点がある一方で、プラスの財産も受け取れなくなったり、手続きに時間とお金がかかったりという注意点もあります。

手続きでは、解体費用や相続財産清算人への支払いが必要になることもあります。相続放棄した後も、場合によっては管理の責任が残ることもあるので、よく調べてから決めるのが安心です。

空き家の相続放棄を検討する場合には、弁護士や司法書士など相続に詳しい専門家に相談することをお勧めします。

この記事の執筆者:つぐなび編集部

本記事は、株式会社船井総合研究所が運営する「つぐなび」編集部が執筆しています。

 

 

 

 

この記事の監修者:天馬司法書士事務所 松本 正勝

大阪府大阪市の天馬司法書士の松本正勝先生2

天馬司法書士事務所は、大阪市北区・南森町駅すぐの相続に強い司法書士事務所です。代表は約20年の実績を持っています。

相続放棄や複雑な相続にも対応し、これまでの相談実績は2,000件以上です。税理士など他士業とも連携し、相続手続きをサポートします。

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