まとまった財産を贈与するのに、使える制度は?~生前対策のキホン【6】

更新日:2024.11.25

まとまった財産を贈与するのに、使える制度は?~生前対策のキホン【6】

生前贈与は年間110万円まで無税ですが、この基礎控除を活用しながらも、まとまった財産を贈与する場合に使える制度があります。今回は、新しくなった相続時精算課税制度について紹介します。

▶前の相続のキホンは「配偶者へ贈与したした場合に使える制度はある?~生前対策のキホン【5】

2500万円まで無税の相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、累計2,500万円までの生前贈与を受けた場合に贈与税が無税になる制度です。贈与された財産は、相続する段階で相続財産に組み入れて相続税を計算します。2024年に制度が大幅に変更されて使いやすくなりました。

税率の高い贈与税を回避して財産を移動できる

相続時精算課税制度は、累計2,500万円までの贈与について贈与税が無税になることから、税率の高い贈与税がかからずに早くまとまった財産を贈与したい場合に適用できる制度です。

2,500万円を超える部分については、一律20%の贈与税が課されます。

贈与した人が亡くなった段階で、贈与を受けた財産を相続財産に加算して相続税を計算します。その際、すでに支払った贈与税は相続税から控除されます。

無税でも税務署へ届出書の提出が必要

相続時精算課税制度は、贈与する人は60歳以上の父母または祖父母で、18歳以上の子や孫への贈与に使えます。

贈与税が無税であっても、税務署への届け出が必要です。最初の贈与を受けた翌年の3月15日までに税務署に「相続時精算課税選択届出書」を提出します。

ただし、一旦この制度を選ぶと暦年贈与には戻れない点に注意が必要です。

110万円の基礎控除新設 相続開始前の持ち戻しもなし

相続時精算課税制度は2024年1月から制度が大きく変更になり、使い勝手がよくなりました。変更になったのは、大きく以下の二つです。

①年110万円の基礎控除

相続時精算課税制度を適用しても、累計2,500万円とは別に、暦年贈与と同じく年110万円までの基礎控除が認められるようになりました。110万円以下であれば、贈与税がかからず、相続財産に加える必要もありません。

また、以前はこの制度の下ではたとえ少額の贈与であってもその都度、申告する必要がありましたが、年110万円以下であれば、申告は不要です。

②相続開始前3~7年の持ち戻しは不要

暦年贈与では基礎控除内の贈与であっても、亡くなる前3~7年以内に受け取ったものは、基礎控除前の金額を相続財産に加算する必要があります。

亡くなる直前の3~7年以内の生前贈与の相続財産への持ち戻しについては、以下のコラム記事も参考にしてください。

贈与はいくらまでなら税金がかからない?~生前対策のキホン【1】

一方、相続時精算課税制度の110万円の基礎控除は、持ち戻す必要がありません。

相続時精算課税制度の図解

相続時精算課税制度はどんな人に向いている?

相続時精算課税制度を使って贈与された財産は、相続する段階で相続財産に加えて精算します。ただし、贈与財産の評価は、贈与された時点の評価額を適用します。

このため、贈与した財産が贈与の時より、相続した段階の方が値上がりしていると、相続税の節税になります。

例えば、値上がりが期待できそうな不動産や株式、投資信託、貴金属などを贈与して、実際に相続した段階でそれらの評価額が上がっていても、贈与時の評価が適用できます。ただし、相続のタイミングでこれら財産の評価額が下がっていたとしても、贈与時の評価額を適用します。

相続時精算課税制度の年110万円の基礎控除は、相続開始前に贈与された分を持ち戻す必要がありません。このため、高齢でやや将来に不安があるものの、相続税対策を兼ねて贈与したい方にとっては、使いやすい制度といえます。

 


この記事の監修者:土肥 隆宏(どひ・たかひろ)

ミカタ税理士法人
執行役員CTO/資産コンサルティング事業部統括部長

ミカタ税理士法人土肥さん

2010年税理士登録(登録番号117471 簿・財・法・相・消)
地主等の不動産オーナー、会社経営者、ドクター、投資家等まで含めて幅広い方のご相続の申告に対応可能です。ご相続発生後は実施可能な節税対策が少ないといわれていますが、できうる最善のご提案をさせて頂きます。
また、ご相続後の2次相続を考慮したアドバイス、生前贈与、遺言、生命保険等の金融商品知識も豊富ですので安心してお任せください。

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この記事の執筆者:つぐなび編集部

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